デスク日誌

「盛岡です」

 「盛岡です」
 朝7時55分、NHKから男性アナウンサーの名調子が聞こえた途端、わが家では身支度の手がぴたりと止まる。あのお天気中継をご存じの人も多いはず。先日はこんな具合だった。
 「青空、春がすみ、岩手山。快晴の盛岡です。見渡す限り、待ち望んでいた光にあふれています。ただ、少し空気は冷えていて、今朝の最低気温は氷点下0.1度でした。まぁ予想最高気温が17度なら、朝の冷気も爽やかにさえ感じられます。春が、いよいよ舞い立つ、盛岡でした」
 と、思わず全文紹介してしまうほど情感豊かな表現力。夕刊のお天気記事を担当していたこともあり、常々、心の師と仰いできた。
 結局、感性を研ぎ澄ます努力を続けてきた人と、研ぎ澄ますつもりがうっかり摩滅させていた自分の差を痛感するだけだったけど。
 こちらも春から「盛岡です」。高校時代の3年間を過ごした町に戻ってきた。
 総局の窓からは目の前に岩手公園の石垣が見える。暖かくなったら、お城の草に寝転んでみようか。よわい五十ではあるが、ひょっとして十五のころの感性を取り戻せるかもしれない。
(盛岡総局長 矢野奨)


2017年04月12日水曜日


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