デスク日誌

恩返しの記事

 9月に86歳で他界した出雲幸五郎さんは仙台の名物人間の1人だった。若林区荒町で文具店を営み、発想豊かな街おこしを続けた。訃報を挟んで8〜10月、本紙に3本の記事が載った。
 店の2階で療養した出雲さんに苦労話や辛口の世評を聴いたという夕刊「河北抄」、街おこしへの情熱の半生をつづった「残照」、有志がお別れコンサートを催すという「河北抄」。
 書き手は報道部デスク、夕刊編集部記者、論説委員と異なり、世代も違う。出雲さんは、衰退する古い商店街に人を呼ぶ活動に取り組んだ1980年代から、歴代の記者を引きつけた。
 筆者が取材したのは仙台が人口100万の政令市になった前後。100億円規模の建設事業が街を変え、市民が培ってきた杜の都らしい地域づくりの伝統が危機にさらされた時代だ。
 荒町など伊達政宗以来の町名も市から変更されそうになった。出雲さんは反対の先頭に立ち、「町名は文化だ」と住民集会で熱弁を振るった。ついに変更を撤回させた成果に感動した。
 記者は日々出会う人から学び、育ててもらう。相談なしで書かれた3本の記事はそれぞれの恩返しだった。(論説委員 寺島英弥)


2017年11月11日土曜日


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