デスク日誌

世論調査

 世論調査が好き、という記者はまずいない。無言で電話を切られたかと思えば、質問を遮って持論をまくし立てる人もいる。ストレスのたまる作業なのだ。
 震災で40人が犠牲になり、保存か解体かで揺れる岩手県大槌町の旧役場庁舎について、町民世論調査を試みた。結果は「解体すべきだ」が7割だった。
 平日の日中、電話に出るのはお年寄りばかり。電話をかけ続けるうち、疑問が湧いてきた。
 「解体」賛成の人に理由を尋ねると、大抵は「維持管理費がかかるから」と返ってくる。本音だろうか。維持管理に要する費用は年間120万円。町に出せない額でもなかろう。
 「身内が11人も死んだんだぞ。いいかげんにしろ」と怒鳴る老人の回答も「維持管理費」だった。
 つまりは、そういうことなのだ。真の理由を口にすることは、人生の最晩年に背負わされてしまった闇をのぞき見られるに等しい。
 総局では事務担当の女性が、丁寧に電話の声に耳を傾けていた。聞けば大槌町で叔父が今も行方不明だという。彼女だけが、最初からお年寄りたちが抱く悲しみの深さに気付いていた。
(盛岡総局長 矢野奨)


2018年03月14日水曜日


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