河北抄

 「七輪(しちりん)の上の網にのせると、ジュウジュウブツブツと鳴きながら焼け始める。30%近いタンパク質と7〜8%もの脂肪があるから、炭火であぶられると脂肪が溶けだし落ちていぶされる。その煙のにおいが、食欲を奮いたたせるのである」
 五感で食を満喫する農学者小泉武夫さんが、こう魅力をつづるサンマ。同じ著書で、冬にかけ「脂がのりにのる」と紹介するサバとともに、秋の味覚であり、わが国の魚食文化には欠かせない。おなかばかりか、心まで満たしてくれる。
 日本人は魚を食べなくなった。2001年に40キロあった魚介類の1人年間消費量が15年には26キロに。主な原因は「調理が難しい、面倒」との消費者意識にあるという(農林水産省広報誌9月号)。サンマもサバも近隣諸国の乱獲などから資源減少が心配されるとはいえ、これでは魚食文化を自ら手放すようなものだ。
 近隣の国で魚がなぜ人気か。キーワードの一つは健康。面倒などと言わず不漁の時こそ、その価値を見つめ直したい。焼きサンマは、七輪に及ばずともガスのグリルで十分うまいのだから。


2017年09月13日水曜日


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