河北抄

 キツネが登場する昔話は数え切れない。日本には、なぜ、これほど多くの「キツネのはなし」があるのだろう。
 仙台市内で先日あったイベント「民話のなかのキツネたち」(みやぎ民話の会など主催)で、人間とキツネの関係について話し合われた。キツネは人間のそばにいながら、犬や家畜のように手なずけられておらず、独自の世界を持つ。人間とキツネは、隣り合う世界を行ったり来たりしていたのではないかという。
 九つの民話が朗読された。印象的だったのは、「お婿さん」がキツネにだまされて、崖の上から落ちて死んだという話。婿はいつも家の中で虐げられていた。本当は自殺したのかもしれない。だが「キツネに化かされた」と片付けられれば、婿に入った家も、婿の実家も、そして婿自身も、誰も傷付くことはない。
 「人間の世界を丸く収めるために、キツネに背負わせたものもあった」。半世紀にわたり民話の「採訪」を続ける仙台市青葉区の小野和子さんは、こう話す。
 今、身近にキツネはいなくなった。代わりとなる存在はいるのだろうか。


2018年02月13日火曜日


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