河北春秋

 韓国南端の農村からソウルの青瓦台を目指すトラクターの列をテレビが報じていた。「農政の失敗で米価が過去最低」と農民は怒る。朴槿恵政権への不満は、親友による国政介入疑惑だけではもはやない。裏口入学を糾弾する受験生も交じり、デモに集まる人々のエネルギーはすさまじい▼朴氏が「国会に進退を委ねる」と、任期途中で辞任する意向をついに表明した。あれこれ条件を付け、弾劾訴追をかわす延命工作ともされるが、大統領失格者と自ら認めたのは確かだ▼この国の歴代大統領のカネにまつわる不祥事、哀れな末路は毎度のこと。なぜなのか。王朝時代以来続く権力抗争の悪弊という説もあれば、親族や知人しか信じない一族主義に不正の温床を嗅ぎ取ることもできる▼強大な権力者ほど孤独と恐怖に震えているという。国民が抱える不満を噴出させまいと、外敵をつくり目をそらさせようとする。それが国家主義につながり、国はあらぬ方向に流れていくのだろう▼慰安婦問題で国同士がぎくしゃくしていた昨夏、「日韓地方紙フォーラム」で東北学院大の郭基煥教授はこう述べた。「国家の暴走を制御できるのは、私たちが育む地域の理性だ」。隅々で暮らす一人一人の言葉に耳を傾けるのが務め。全ての国の指導者に当てはまる。(2016.12.1)


2016年12月01日木曜日


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