河北春秋

 津軽の浜の言い伝え−。渡り鳥のガンは枝をくわえて海を越える。疲れたら波間に枝を浮かべて止まり、羽休め。津軽の海岸に近づくと枝を落とし、さらに南へ。翌年、北へ向かう途中に自分の枝を見つけ、またくわえて去る。後には冬を越せなかった鳥の枝が残る▼「鳥の供養にと、浜の小枝を集めて風呂をたてる風習が昭和30年代までありました」と、雪天俳句会(青森市)主宰の新谷ひろしさん(87)が教えてくれた。春の季語「雁(がん)風呂」「雁供養」の由来である。<雁風呂の煙けはしき海峡見ゆ>(新谷さん)▼昨今の趣はこうした感傷と食い違う。ガン類を代表するマガンの国内への飛来数は約18万羽。全体の9割が秋に伊豆沼などの宮城県北に集まるが、最近は夏に生まれたばかりの幼鳥がその4割を占めるという。「10年前はせいぜい2割。元気に育つようになった」と研究者▼理由は転作大豆。畑の刈り残しで栄養をつけた親鳥はシベリアで元気に子育てに励み、ひなも丈夫だという。おかげで宮城県北は「定員オーバー」の様相。過密による伝染病リスクが心配されている▼昔は関東地方にも数多くのガン類が渡った。自然環境をいくらかでも取り戻し、越冬地を分散させた方が渡り鳥のためではないか。北帰行はそろそろ終盤に入っている。(2017.2.27) 


2017年02月27日月曜日


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