河北春秋

 「戸惑える群れを飼いならすため『合意のでっち上げ』が要る。権力者はメディアと大衆文化を切り離しておかねばならなかった」。米国の言語学者ノーム・チョムスキー氏は、20世紀の大衆民主主義をこう批判した▼世論操作や事実の捏造(ねつぞう)はそうやって始まる。トランプ政権もそんな古い戦略にならっているのか。都合の悪い情報をフェイク(偽物)と断じ、報道する際は情報源を示せと言う。気にくわないメディアを記者会見から締め出しもした▼初めて施政方針演説をしたトランプ大統領。「ささいなことで争う時は終わった」と融和を呼び掛けつつ、国境の壁建設をすぐに始めるとし、新たな入国審査強化策や国防費増額にも言及した。分断の傷口は癒えることはなさそうだ▼数々の政策はメディアや国民の評価を受けることになる。「戸惑える群れ」などいない。誰もが自由に賛否を表す力を持っている。反論や批判を封じることなく、議論によって乗り越えるすべをトランプ氏にもそろそろ身に付けてほしい▼演説の一言ごとに立ち上がり、拍手を送る議員らの迎合が、フェイクを生む現代の「群れ」のように映る。チョムスキー氏はこうも言う。「長い市民の運動が言論の自由を勝ち取った。闘うのを忘れてしまえば権利は失われていく」(2017.3.2) 


2017年03月02日木曜日


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