河北春秋

 『Thway(トウェイ)−血の絆』という日本とミャンマーとの合作映画がある。元日本兵を父に持つ女性が太平洋戦争後の旧ビルマに残された異母弟を捜し歩く。「混血の子」と不遇な扱いを受け出自を隠して生きていた弟と、最後には巡り合う▼戦争が引き裂いた家族の悲話は、アジア諸国で現実に続いている。戦後の一時期ベトナムにとどまり、フランスとの独立戦争に加わった約600人の元日本兵たち。帰国の際には現地の妻や子の帯同は許されず、幾つもの家族が海を隔てて離れ離れになった▼ベトナムを訪問中の天皇、皇后両陛下が元日本兵の妻子らと面会され長年の苦労をねぎらった。「子どもたちのために生きてきました」。30歳の時、離別を余儀なくされた女性(93)に、陛下は「本当に大変でしたね」と、いたわりの声を掛けた▼家族を残して去ったことを悔いる人生も悲しい。95歳になる夫は帰国後、日本ベトナム友好協会の設立に奔走し、交流に尽力してきた。今、どんな思いでこの長い道のりを見つめているのだろう▼旧日本兵家族の歴史は、「過去の問題」になりかけていた。陛下が正面から受け止めたことで埋もれていた記憶に光が差した。「これで生まれ変われた」と妻子ら。血の絆を取り戻したかのように涙した。(2017.3.4)


2017年03月04日土曜日


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