河北春秋

 謎のほほ笑みの「謎」とは、何なのだろう。レオナルド・ダビンチの『モナリザ』には、物の輪郭をぼかして境目が分からないようにする技法が用いられている。「スフマート」という。イタリア語で「煙のような」という意味だそうだ▼口元の表現に使われている。その微妙な陰影は笑みをますます謎めいたものにしており、制作から500年たった今も議論の対象になっている。アートならロマンで済むけれど、南スーダンで上がった煙は、戦闘だったのか武力衝突だったのか▼国連平和維持活動(PKO)に派遣されている自衛隊部隊の撤収理由が、どうも曖昧だ。「治安の悪化によるものではない」と言うが、陸上自衛隊の日報にあった「戦闘」の文字を、国民は一度見ている。納得できるだろうか▼稲田朋美防衛相が国会答弁で右往左往している。撤収理由以前に、日報の存在に関する説明の矛盾を指摘されている。渦中の学校法人との関わりでも、無関係という強弁を一変した。どちらの問題もけむに巻くつもりだったのでは? そう勘繰られても仕方がない▼スフマートは「くすんだ」という意味合いもあるという。国民の多くは今、政権にほほ笑みを向けているけれど、謎や曖昧が塗り重ねられるようなら、たちまち表情は曇っていく。(2017.3.17) 


2017年03月17日金曜日


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