河北春秋

 その珍しい姓に遠い夏の日を思い出す。昭和44(1969)年の夏の全国高校野球大会決勝で松山商と引き分け再試合の名勝負を演じた三沢高校。太田幸司投手とバッテリーを組んでいた捕手が小比類巻(こひるいまき)という姓だった▼元々は野手。正捕手の故障もあって、太田投手の速球を1人で受け続けた準優勝の立役者だった。ことしの選抜大会に初出場する不来方(こずかた)(岩手)の主将は小比類巻圭汰投手。エースで4番。選手10人のチームを引っ張る大黒柱だ▼話題には事欠かない。内、外野、投手もこなす唯一の控え選手が実は一番、鍵を握る。甲子園練習は、女子マネジャー3人もヘルメットをかぶって手伝った。開会式では声楽のコンクールで全国1位の3年竹内菜緒さんが国歌を独唱するという▼足らざるところを皆で補い、総力戦で臨む。「10人でも一人一人が自分の良さを出し、勝ちたい」と小比類巻主将。三沢もチームの軸を中心に結束の固さが身上だった。少ない好機を生かし、1点差を守って勝ち上がっていった▼<不来方のお城の草に寝ころびて空に吸はれし十五の心 石川啄木>。早春の甲子園の空の下、無心で悔いのないプレーを。選抜大会はあす開幕。東北勢は第2日の盛岡大付を先陣に、仙台育英は第4日、不来方は第5日に登場する。(2017.3.18)


2017年03月18日土曜日


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