河北春秋

 国際宇宙ステーションの日本実験棟の愛称は、未来への望みと期待を込めて「きぼう」と名付けられた。その船に保管され、地球を4100周して、若田光一宇宙飛行士が2009年7月に持ち帰ったのは、全国14カ所の名桜の種▼高知県仁淀川町にある「ひょうたん桜」は宇宙を旅した種の一つ。樹齢500年と推定されるエドヒガンで高さ20メートルを超える。つぼみの形でそう名付けられたらしい。戦国武将の武田勝頼が落ち延び、再起を誓って植えた伝説も残る▼宮城県七ケ浜町に30日、この「宇宙桜」の苗が植樹される。帰還した200粒のうち、発芽に成功したわずか4粒に由来する苗。財団法人ワンアース(茨城県)のプロジェクトで、町の仮設住宅閉所式に合わせた▼津波で大きな被害を受けた七ケ浜では421戸の仮設住宅が建設され、ピーク時には1277人が暮らした。震災から6年を経て、今月末に最後の1人が出る。宇宙桜はプレハブの住宅が軒を重ねていた高台に植えられる▼宇宙環境を耐えた桜は生命力にあふれ、立派な枝ぶりを見せてくれるだろう。被災者が生活再建を果たした証し、子孫に伝える教訓、避難の目印にと、町は一本の桜にさまざまな思いを託す。やはり、この桜も「きぼう」なのだ。未来への望みを込めて。(2017.3.19)


2017年03月19日日曜日


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