河北春秋

 フランスの大学入試問題。「夜更けのセーヌ川の岸を通りかかった君は、娼婦(しょうふ)が川へ飛び込もうとするところに出会う。君は言葉だけで彼女の自殺を止められるか」。井上ひさしさんが随筆で紹介している▼難解である。変なことを言って身投げでもされたら…。実は満点をもらった受験生がいた。答えは「『わたしと結婚してください』と説得するしかありません」。後に小説『王道』『人間の条件』を著すアンドレ・マルローだったという▼大学入試センター試験が今の中3から対象に衣替えとなる。難しい女心を読めとまで求めはしないだろうが、実施案は国語と数学に記述式問題を加えた。四角いマスを塗りつぶすマークシート式で知識量を測り、文章で思考力や表現力をみるらしい▼この実施案、遠藤周作さんが聞いたらさぞ喜んだろう。かつて自作小説が入試に出題され、主人公の心理状態を考える問題に挑戦。悪戦苦闘して四つの選択肢全てに○を付けたら正解は一つだった。「抗議する」と怒った様子が『狐狸庵(こりあん)閑談』に書かれている▼でも、待てよ。国語で3問ほど出題される記述式に答えるのは最大120字。「こんな程度で表現力を問われてもな〜」と作家の皆さんは少々戸惑うかもしれない。そこはマルローに倣ってビシッと。(2017.5.19) 


2017年05月19日金曜日


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