河北春秋

 「今日も一瞬、一瞬に良い選択をして生を刻み、いつかしら、『なんだ、会えたっちゃ』という日を迎えればいい」。東日本大震災から6年半たった11日、石巻市門脇町の西光寺。樋口伸生副住職(54)が本堂に集った10人の男女に語った。津波で子どもらを亡くした遺族だ▼「精いっぱい生きた後、息子にまた会える。小学6年の三男を失い、死ぬことさえ考えた私を、枕経に訪れた副住職のそんな言葉が救った」と鈴木由美子さん(48)。同じ境遇の親たちと「蓮(はす)の会」をつくり、月命日の毎月11日、西光寺で祈りと語らいを続ける▼「元気そうでいいね」「私なら生きていられない」。買い物などで出会う知人らから言葉を掛けられる度、傷ついたという。街がにぎわう花火大会の日など、耳をふさぐように仕事に没頭した▼「復興」の掛け声に悲しみはかき消され、愛する家族の小さな位牌(いはい)や写真を肌身離さず暮らす者が置き去りにされる。「そんな6年半だった。私たちは何も変わっていないのに」▼声を上げられなかった遺族も、当事者でない人もつながり、共に生きる明日の種をまきたい。鈴木さんたちは長年の思いを形にする「震災フォーラム」を12月3日、西光寺で開く。仲間との準備は手探り。だが、誰よりも亡きわが子らが勇気をくれる。(2017.9.13) 


2017年09月13日水曜日


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