河北春秋

 映画『男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花』(1980年公開)で、寅さんは初めて沖縄を訪れた。心の友リリーが病に倒れ、空港からすぐに病院へ。バスは嘉手納基地前を通る。広大な敷地とフェンス、戦闘機の爆音。寅さんは座席でただ眠る▼山田洋次監督は演出で悩んだらしい。「寅に『広いね〜』と言わせても…。ここは何も語らず、その現実を映像で見せようと思った」と、あるインタビューで話している。あれから37年。あのバスには本土のわれわれも無言のまま乗っていたのかもしれないとふと思う▼またも米軍機の事故が起きた。沖縄県東村(ひがしそん)の牧草地で、普天間飛行場所属の大型輸送ヘリが炎上、大破した。現場は民家から約300メートル地点だった。同じ沖縄本島北部では昨年12月、オスプレイが不時着したばかりである▼沖縄県の統計によると、米軍機の墜落事故は本土返還の72年から昨年末まで47件。年に1件以上のペースである。米軍三沢基地を抱え、F16の訓練飛行が行われる青森県内でさえ平成以降2件。沖縄県民は信じがたい環境の中にいる▼寅さんは映画でずっと眠っていたわけではない。人と語り、笑い、三線(さんしん)を聞きながらしみじみ言う。「ホントいい所だね〜」。危険と隣り合わせの生活に目をつむっていてはならない。(2017.10.13) 


2017年10月13日金曜日


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