河北春秋

 「伝説」を初めて目にした。将棋の羽生善治棋聖(47)は難敵との対局で、勝利を読み切って指す1手がぶるぶる震えるという。盤上からのテレビニュースの映像が映した。こたつに入りながら「偉業」に立ち会う感動を覚えた▼5日あった竜王戦第5局。羽生さんは通算7期目のタイトルを勝ち取って「永世竜王」の資格を得、名人などの永世称号で史上初の7冠を達成した。いずれも連続5期、通算10期といった覇業が条件で、永世称号を一つでも持つ棋士も過去に10人という至難の座だ▼15歳でプロになって以来「天才」をうたわれ、21年前には初めて7大タイトルを独占。数えきれぬファン、棋士に憧れる子どもらを全国に広げた。が、前人未到の境地を会見で問われた羽生さんは、苦しい模索を吐露した▼「将棋の本質をまだまだ分かっておらず、強くなれるかどうか」「研究熱心な若手の棋譜を取り入れなくては」。最近、盤上を席巻しつつあるのは人工知能(AI)の将棋ソフトに親しむ新世代。史上最年少で公式戦50勝を挙げた藤井聡太四段(15)もその一人だ▼通算タイトル獲得記録も99期と大台に迫るが、羽生さんは「過去のことは意味がない」と言い切った。常に挑戦者であり続けたい…。天才ならずとも、その思いだけは分かち合える。(2017.12.7) 


2017年12月07日木曜日


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