河北春秋

 寒い季節や病で床に伏したとき、よく思い出す。<遊びをせんとや生まれけむ 戯れせんとや生まれけむ 遊ぶ子どもの声聞けば わが身さへこそ動(ゆる)がるれ>。平安時代後期の歌謡集『梁塵(りょうじん)秘抄』に収められている▼「子ども」を「選手」に置き換えてうたってみる。躍動する姿が目に浮かび、心が揺り動かされないわけがない。何だか体もうずうずしてくるではないか。見る者をも楽しませるというスポーツの魅力がそこに潜んでいる▼平昌冬季五輪はきのう夜に開会式があり、開幕した。4年に1度の大舞台だから、観戦者は選手の表情の奥に情念や物語をつい探してしまう。懸ける意気込みが伝われば伝わるほど、韓国と日本、平昌と東北の距離が縮まる。オリンピックとはやはり政治や国境を越えていく▼フィギュアの羽生結弦選手(ANA、宮城・東北高出)は東日本大震災後、リンクに臨む心構えをこう言った。「責任感も出てきた。見た人が喜んだり頑張ったりしてくれるなら最高だけど、まずは勝つことを優先する」と。演技を通じて被災者への力強いメッセージがきっと今回も届く▼室町時代の『閑吟(かんぎん)集』に<一期は夢よ たゞ狂へ>という小唄がある。全ての選手は思いを抱きながら、遊ぶように競ってほしい。身も心も躍る17日間である。(2018.2.10)


2018年02月10日土曜日


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