社説
  • 記事を印刷

性的少数者支援/学校現場の理解を深めたい

 心と体の性が一致しなかったり、同性に恋愛感情を抱いたりする子どもたちが、不当な差別を受けずに安心して学校生活を送るための第一歩になると期待したい。
 文部科学省が性同一性障害や同性愛など、幅広い性的少数者の児童や生徒に配慮を求める初めての通知を、全国の教育委員会などに出した。
 性別に違和感を持つ人は、先天的に人口の5%ともいわれる。心理的性別と肉体的性別が一致しない性同一性障害の場合、9割が中学校卒業までに自分の性について違和感を覚え始めているという。
 日本は性的少数者について正面から向き合ってこなかった。多様な性についての理解不足は否めず、教師や同級生の言動が原因で不登校になるケースも多い。こうした子どもたちをどう受け入れ支えるか。教育現場の重い課題だ。
 性別に違和感を持ちながら、親にも打ち明けられずに一人で思い悩む児童生徒は少なくない。文科省の通知は、子どもが相談できる環境づくりの重要性を説き、悩みや不安を抱える子どもの良き理解者となるよう教師を促した。もっともなことだろう。
 男らしさや女らしさではなく、自分らしさを大切にしようと葛藤する性的少数者の子どもたちを、あるがまま受け入れる姿勢こそが、教師には求められる。
 今回の通知で特に評価できるのは、医療機関の診断の有無にかかわらず、当事者である児童生徒に寄り添って支援するよう学校に求めた点だ。
 親に相談できなければ医療費は払えず受診は難しい。親の理解も得て受診するとしても、診断には2人以上の医師の統一判断が必要になる。地域によっては専門の医師が少ないこともあり、診断の確定まで半年以上かかってしまうこともあるという。
 救いを求めて相談してきた子どもに対し、しゃくし定規に診断書の提出を求めるような無理解な対応が、どれだけ子どもの心を傷付けるか。学校側は気付くべきだろう。
 性的少数者であることの公表についても、通知が指摘する通り慎重さが大事だ。学校での対応をより効果的に進めるには、教職員間での情報共有だけでなく、他の児童や生徒の理解と協力が欠かせない。だからといって公表を急いではならない。児童生徒の気持ちを尊重しながら、親や医療関係者も交えた話し合いを重ねて結論を導くべきだ。
 文科省が昨年初めて行った実態調査によると、肉体的な性別に違和感を持ち学校に相談している児童生徒の6割が、トイレや更衣室の使用、髪形や制服、呼称などで学校から配慮を受けていた。通知にもこうした支援事例が紹介されており、参考になろう。
 ただ、周囲に受け入れられ問題なく学校生活を送っている子どもがいる一方で、自傷行為を繰り返す例も報告されている。画一的ではない、個別事情に応じたきめ細かな対応の大切さがうかがえる。
 性的少数者とされる児童生徒はどの学校にもいる。その前提に立ち、教員研修や児童生徒向けの人権講演会など、正しい知識を身に付けるための取り組みが急がれる。


2015年05月25日月曜日

  • 記事を印刷
先頭に戻る