社説

マイナンバー始動/このままでは不安が募る

 国民一人一人に12桁の番号を割り当て、行政手続きなどに活用するマイナンバー制度がいよいよ動きだす。
 5日の法施行によって、番号を通知するカードの発送作業が始まり、早ければ今月中旬から来月にかけて自治体から簡易書留で郵送される。
 活用が始まる来年1月まで既に3カ月を切り、予定の段取りではあるのだが、肝心の国民理解が進まない中では制度への懸念が根強く残る。
 混乱を回避できるのか。国民の利益になる制度として的確に運用できるのか。理解不足を前提にした慎重で丁寧な取り扱いが欠かせない。
 まずは番号通知カードがきちんと届くかどうかの関門がある。住民票記載の住所に住んでいない人などは多く、対象となる約5500万世帯のうち少なくとも5%の275万世帯には受取人不在で届かない可能性があるという。
 東日本大震災の被災者などを対象に、住民票以外の住所で通知カードを受け取れる特例の期限を見直し、今後も申請を受け付けることにしたのは当然だ。見切り発車の批判もある中、まずは国民の側に立って、事情を最大限くみ取る姿勢が求められる。
 通知後は、番号を聞き出して詐欺などに悪用する動きへの警戒も必要だ。番号を他人に教えないよう、注意の呼び掛けを強化してほしい。
 そもそも、マイナンバーのことをよく分からない人が相当数に上ることを、全ての対応の出発点にすべきだ。
 内閣府が9月に発表した世論調査では、マイナンバーの言葉自体を知らない人がまだ10%、内容が分からない人は47%に上る。開始間近の制度としては認知度が低すぎる。
 税と社会保障、災害関連の個人情報を個人番号で一体で管理することで、行政手続きが簡単になり、必要な人に迅速な給付が可能になる。政府はそう繰り返しているが、多くの人は制度の必要性を受け止められないでいる。
 先の世論調査では、認知度は以前の調査より改善しているものの、「制度に期待することはない」との答えは逆に23%から31%に増えた。
 希望すれば交付される顔写真付きの個人番号カードは身分証明などに活用できるとしているが、メリットとしては響かない。行政が個人情報を効率的に管理するための制度という本質が次第にせり出してきて、むしろ警戒感が広まっていると言えないか。
 法改正で預金口座、健診情報などへの活用が決まり、番号カードにクレジットカード機能を持たせるといった用途拡大の検討が進んでいる。
 かつての国民総背番号制論議でもあったように、暮らしぶりが国によって丸ごと管理され、監視される危険性への懸念は消えていない。
 情報管理面での不安も、日本年金機構の流出問題で一層増した。年金情報の連結は先送りされたが、同様のサイバー攻撃は全国の自治体に相次いでおり、共同通信社の調査に対して60%の自治体が「安全策に不安」と答えている。
 このまま制度の運用に踏み込んで本当に大丈夫か。募る不安に向き合い、説明を尽くす責任が政府にはある。


2015年10月07日水曜日

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