社説

増える非正規労働/均等待遇が「活躍」の前提だ

 非正規労働者が増える一方だ。厚生労働省が先日発表した就業形態の多様化に関する調査で、1987年の調査開始以来初めて4割に達した。
 女性の場合、非正規労働者の数が正規労働者を上回る。総務省の労働力調査(2014年)によると、パート・アルバイトや派遣社員、契約社員など非正規の職員・従業員は前年から36万人増えて1332万人。女性雇用者総数の約57%を占め、その割合は年々上昇し続けている。
 不安定な雇用と低賃金は貧困化を招く。民間事業所で働く女性の4割以上が年収200万円以下(13年、国税庁調査)で、経済的自立が困難な状況にある。その大半は非正規労働者だ。
 「1億総活躍社会」の掛け声が空々しく、むなしい夢物語に思える現実である。「活躍」のためには、その前提となる安定した生活、公平な労働環境が保障されなければならない。そのための即効力ある施策が要る。
 非正規で働く女性の中でも深刻なのは、単身者と母子世帯だ。単身女性は勤労世代である20〜64歳の3人に1人、65歳以上の2人に1人が相対的貧困の状態に陥っている。母子世帯では8割以上の母親が就労しているにもかかわらず、6割が非正規労働で平均年収は125万円しかない。
 背景にあるのは著しい賃金格差だ。正規・非正規という雇用形態の違いによる差別と、男女の違いによる差別。非正規の女性は二重の差別を受け、低賃金にあえいでいる。
 雇用形態や性別による賃金などの差別を是正し、均等待遇を実現させるための実効的な政策を急ぐべきだ。「同一価値労働同一賃金」の原則の確立は、国連女性差別撤廃委員会や国際労働機関から繰り返し勧告されていることだ。
 生活困窮者に対しては、現金給付型支援の拡充も効果的だろう。例えば、ひとり親への児童扶養手当。1人目の子どもには月額4万円が給付されるが、2人目は5千円、3人目以降は3千円と驚くほど少ない。当事者はもちろん、支援者らから増額を訴える声が高まっている。
 非正規雇用の女性は、就業の継続さえ十分に保障されていない。子どもを産み育てようとしても、育児休業取得の要件が壁となり、育休を取って職場復帰できる人はわずか4%だ。
 厚労省が育児・介護休業法を改正し、非正規労働者の取得要件を緩和する方針を打ち出したことは歓迎したい。「希望出生率1.8の実現」「女性の活躍」「子育てと仕事の両立支援」と、安倍晋三首相が高らかに唱えるお題目とはかけ離れた、厳しい状況の改善につながってほしい。
 若者世代が出産・子育てに前向きになるために必要なことは何か−。先ごろ厚労省が公表した人口減少社会に関する意識調査では、圧倒的最多の7割が「安定した雇用と収入」を挙げた。
 「活躍」のスタートラインにも立てない多数の人々の実情をきちんと把握すべきだ。華々しく「矢」を振りかざす前に、血の通った施策を矛盾なく、着実に積み重ねていく姿勢を求めたい。


2015年11月19日木曜日

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