社説

高浜原発再稼働へ/安全のお墨付きではない

 関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の再稼働差し止めを決めた4月の仮処分について、福井地裁がきのう、取り消す決定を下した。
 必要となる地元自治体の同意の手続きは既に完了しており、司法判断が覆ったことで、高浜2基は運転再開の日程が動きだすことになる。
 政府や電力会社など推進側は、描いてきたシナリオの破綻が回避され、他原発でも再稼働の流れが加速すると歓迎しているが、今回の決定は安全のお墨付きではない。ましてや原発への不安や不信を取り払うものになり得ないことを肝に銘ずる必要がある。
 福井県知事の同意表明は地裁決定に先んじる形で22日に行われ、駆け込み的に間に合わせたとの批判がある。
 批判をよそに、再稼働に向けて既定路線のように手続きを積み上げていくような進め方は、安全よりも電力会社の経営を優先していると受け止められてもやむを得まい。
 政府が再稼働の根拠にする福島第1原発事故後の新しい規制基準について、再稼働を禁じた4月の仮処分決定は「緩やかすぎて、基準に適合したとしても安全性は確保されない」と厳しく指摘した。
 再稼働を認めた今回の地裁決定は「内容は合理的だ」と正反対の判断を示した。同様の判断は九州電力川内原発(鹿児島県)の差し止め申し立てを却下した鹿児島地裁の決定でも示された。司法の場では新基準の妥当性について評価が定まる方向にある。
 しかし、政府が「原子力規制委員会が適合と判断すれば再稼働を進める」との姿勢を決め込み、一方で規制委が「新基準適合と安全はイコールではない」と言い続ける構図は変わりがない。
 安全がどこで担保されるかが曖昧なままなし崩し的に再稼働が進むことに、国民の多くが疑念を募らせている。
 日本世論調査会が川内原発が8月に再稼働した後の9月中旬に行った調査では、再稼働反対が58%に上り、賛成の37%を大きく上回った。
 反対理由で一番多かったのは「安全対策、事故時の住民避難などの防災対策が不十分」。民意は「福島事故後は万が一の判断を避けることは許されない」と指摘した4月の仮処分決定の判断にこそ近いと言えるのではないか。
 仮処分の判断を不規則と片付けず、万が一の危険に謙虚に向き合い、前がかりに陥ることなく慎重に事を進める出発点にすべきだろう。
 再稼働手続きで言えば、地元自治体同意の範囲をめぐる疑問が解消されていない。
 高浜原発でも、京都府、滋賀県の一部が避難計画策定が義務付けられる30キロ圏に入りながら同意手続きの対象とされず、反発を招いている。関係する自治体の意見を再稼働手続きにきちんと反映させる仕組みを確立すべきだ。
 エネルギー基本計画に定めた原発依存度低減の道筋を早期に示すことをはじめ、原発の不信や不透明感に応える第一の責任は政府にある。
 避難計画への関与や国民理解の促進で政府の責任が明確化された、と受け止める向きもあるようだが、まだまだ不十分と言わざるを得ない。


2015年12月25日金曜日


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