社説
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最終処分有望地/時間をかけて丁寧な議論を

 丁寧な説明と幅広い議論が十分に行われるかどうか、早くも懸念されている。「核のごみ」の最終処分場の候補地の選定だ。国は科学的有望地を年内に提示する方針を決めている。
 核のごみは、原発の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムなどを取り出した後に残る廃液を、ガラスと混ぜて固化体にしたものだ。極めて強い放射線を出すことから、「高レベル放射性廃棄物」と呼ばれる。国は地下300メートルより深い場所で、放射能レベルが下がるまで、約10万年にわたって隔離する地層処分を目指している。
 科学的有望地は、地質などの自然科学と土地利用の制約などの社会科学の両分野で検討して判断する。
 経産省の有識者会議は自然科学的観点での要件をほぼ固めた。火山や活断層の近くや、隆起、浸食が大きい地域などは「適性の低い地域」として除外する。軟弱な地盤や鉱物資源のある場所も除く。
 これらに該当しない地域を「適性のある地域」とし、中でも海上輸送に有利な海岸から20キロ以内などを「より適性の高い地域」に分類する。
 さらに社会科学的な検討を加えた上で、今年後半に適性を色分けした日本地図を提示する見通しだ。
 最終処分地選定で、政府は自治体に手を挙げてもらう公募制を断念した。かつて高知県東洋町が文献調査に応募したことがあったが、住民らの反対で町長が辞任に追い込まれ、応募を撤回した。公募では進展がみられず政府は昨年5月、国主導で処分地を選定すると方針転換した。
 共同通信社の最近の全国調査によると、最終処分の候補地に選ばれても、13府県は「一切受け入れる考えがない」と回答した。8道県も受け入れに否定的だった。方針を明確にしなかったのは宮城など24都府県で、受け入れに前向きな自治体はなかった。
 使用済み核燃料再処理工場のある青森県は「最終処分場にしない」という確約を国から得ている。地層処分の研究施設がある北海道も受け入れには否定的だ。原発や核燃料サイクル施設を受け入れていても、最終処分場は困るというのが自治体の本音だ。
 昨年、九州電力川内原発1、2号機が営業運転を再開した。関西電力高浜3、4号機と四国電力伊方3号機は、原子力規制委員会の審査に合格。原発再稼働の動きが強まっている。このまま全国の原発が次々と稼働していけば、使用済み核燃料の置き場がすぐに満杯になるのは目に見えている。
 地震が多い日本で地層処分が可能な適地があるのか、という疑問も根強い。科学者団体の日本学術会議は、最終処分自体への国民の合意が不十分で、科学的知見も足りないと指摘する。
 福島第1原発事故で、国民の間に原子力への拭えない不信感が広がった。最終処分地の選定は、廃棄物の押し付け合いになりかねない。有望地の説明が、国からの「一方通行」に終始してはならない。長い時間がかかることを覚悟し、丁寧な議論の積み重ねが必要だ。


2016年01月08日金曜日

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