社説

血液製剤不正処分/業務停止だけでは済まない

 40年以上にわたり、周到な隠(いん)蔽(ぺい)工作を重ねて法令違反を続けていたという事実に照らせば、これで十分とはとても言えないだろう。
 化学及血清療法研究所(化血研、熊本市)が国の承認と異なる方法で血液製剤やワクチンを製造した問題で、厚生労働省が110日間の業務停止命令の処分を下した。
 医薬品医療機器法(旧薬事法)に基づく業務停止の期間としては過去最長になるが、製造や販売ができなくなるのは35品目のうち8品目だけで、残る27品目は状況を見ながら出荷を可能とした。
 他社では代替できない製品があるためという。問題発覚後の昨年秋、厚労省は化血研に要請したインフルエンザワクチンなどの出荷自粛を、医療現場の混乱を受けてすぐに解除せざるを得なかった。
 大半の製品を除外した中途半端な業務停止は、あくまで混乱回避のためのやむを得ない措置であり、そうであるならば今回の処分は途中経過という位置付けになる。
 幹部が製造記録の改ざんを指示し、歴代の理事長がそれを了承するという組織ぐるみの不正は、健康被害の有無を超えて、医薬品製造の信用を失墜させた。本来であれば、製造販売許可の取り消しにも相当する悪質さだ。
 化血研の第三者委員会が「常軌を逸した」とまで指摘した不正の始末は、この処分で終わったわけではない。
 過去に薬害エイズ訴訟の被告メーカーの一つとして、安全な医薬品製造を誓いながら、並行して不正を重ねていた経緯も重くのしかかる。
 「(今の)化血研という組織のままで製造販売することはない。結論を110日間で出していただく」と塩崎恭久厚労相が言明している。
 指摘された独善性や閉鎖性を直視し、内部統制を確立するための見直しが可能かどうか。事業譲渡や他社との経営統合もにらんだ解体的な組織見直しが早急に迫られていることを忘れてはならない。
 問題は化血研の行方にとどまらない。国民の命と健康に直結する医薬品の製造を、法令違反の不正メーカーに引き続き委ねざるを得ない現状にこそ、課題の焦点はある。
 国内の血液製剤は化血研を含めて3社、ワクチンは主要6社が寡占的に製造する。安定供給を特定メーカーに依存している構図を危険視し、疑問視する声は強い。
 厚労省は有識者を交えた作業部会の初会合をきょう開いて、こうした業界の問題について議論を始める。国がより関与を強めた形で、競争原理と安定供給を両立させるような改革が求められている。
 寡占製造の是正はすぐには難しいとしても、業界に緊張感と責任感のある対応を迫る措置は急ぐ必要がある。
 事前に通告して実施していた査察を抜き打ち方式に変えることはもちろん、不正があった場合に制裁金を科し、薬価を下げるなどの新しい懲罰措置も検討されていい。
 長く不正を見抜けなかった厚労省自身の責任も当然問われるところだ。慣習やなれ合いを排除することから、再発防止と業界の健全な育成に取り組んでもらいたい。


2016年01月14日木曜日


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