社説

震災談合強制捜査/「緊急復旧」言い訳にならず

 東日本大震災の復旧事業をめぐる談合疑惑が刑事事件に発展する見通しになった。
 被災した高速道路の工事を対象に舗装会社が談合を繰り返していた疑いが強まり、東京地検特捜部と公正取引委員会がきのう、独占禁止法違反(不当な取引制限)の容疑で強制捜査に乗りだした。
 2011年8〜9月に東日本高速道路東北支社が発注した東北自動車道などの12件の舗装工事で、大手3社の東北支店の営業担当者らが中心となり、落札会社を割り振った疑いが持たれている。
 1年前に公取委が強制調査に踏み切った時点から、通常の行政処分では再発防止が期待できない深刻な事案と位置付けられていた。
 刑事責任を問うための捜査は当然であり、業界にはびこる不正の構図をこの機会に徹底解明し、談合根絶の一歩にしなければならない。
 震災5年の節目を控え、復旧・復興事業の受発注の在り方を詳しく検証する意味からも、「闇」を象徴する談合事件の行方を注視したい。
 震災復旧工事であるか否かにかかわらず、まず問題になるのは悪質な談合疑惑がまたも持ち上がった事実だ。
 制裁などを強化する現行の改正独禁法が06年に施行された際に、大手ゼネコンは談合決別を宣言したが、直後の07年には名古屋市発注の地下鉄工事で当の大手ゼネコンによる談合が立件された。
 その後も不正はやまず、地方では官製談合も含めて受注調整の摘発が続いている。
 今回強制捜査の対象になった舗装会社にはゼネコン系列の会社が含まれる。建設業界全体で談合決別の誓いが共有されず、一部では体質改善が全く進んでいない実態が再確認されたことを、関係者は重く受け止める必要がある。
 復興への足がかりになる復旧工事が、利益至上の談合の標的になったことを重ねれば、悪質さはさらに際立つ。
 舗装工事12件の落札総額は約176億円。予定価格に対する落札価格の割合、落札率は平均94.77%で、最高は宮城県内の工事の99.63%だった。震災前の10年度の平均落札率は80%未満であり、あまりにも開きが大きい。
 競争回避の不正な落札により総額で10億円単位の税金が余計に投じられ、舗装会社の懐に入った計算になる。
 「緊急復旧工事を早期に仕上げるためには、各社のアスファルトプラントに近い区間の工事を割り振るのが自然だった」との弁明も聞かれるが、そうであればなおさら工事費は安上がりで済むはずだ。
 復旧工事で果たした役割は評価するにしても、震災の異常事態対応や緊急対応は言い訳にすぎず、結局は工事のうまみを分け合うことを優先した受注調整だったと指弾されても仕方がないだろう。
 26兆円超の巨額な予算が投じられた復興事業の全体を通して、同様のケースはなかったのか。舗装談合に限らない監視の目も必要だ。
 震災復興を不正や悪弊の温存、復活の舞台にされたのでは、犠牲者も浮かばれない。「復興を食い物にした」という被災地、被災者の憤慨を真摯(しんし)に受け止めてほしい。


2016年01月21日木曜日

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