社説
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甘利経済再生相辞任/疑惑全容解明の責任は残る

 金銭授受疑惑で説明責任を問われた甘利明経済再生担当相がきのう、会見で閣僚を辞任すると表明した。
 週刊文春の報道で甘利氏と秘書らに関わる疑惑が表面化してから1週間。甘利氏は会見で、自らに関する部分について政治資金としての適正な処理を強調しつつ、適切さを欠いた秘書らの監督責任を取る形で身を引いた。
 甘利氏は安倍晋三首相の盟友。第1次安倍内閣以降、第2次、現在の第3次改造内閣まで閣僚を担い、長く政権を支えてきた。安倍政権の看板政策「アベノミクス」の関連施策を仕切り、交渉を一手に担ってきた環太平洋連携協定(TPP)は署名式目前で、国会承認も控える。
 今年夏の参院選を前に、論戦の主戦場である予算委員会で集中砲火を浴びるのは避け得ない状況。国政への影響を最小化する「捨て身」の対応で安倍政権を守るとともに、政治家として自ら負う傷を浅くとの思惑もあろう。
 「政治とカネ」をめぐる醜聞は絶えない。一昨年、小渕優子経済産業相(当時)らが辞任。昨年2月の西川公也農相(同)と続き、そして今回の甘利氏である。不明朗なカネとの関係を断ち切れない現状に、国民が再び政治不信を募らせるのは必至で、政権中枢の一人で側近の辞任は安倍政権に打撃を与えよう。
 週刊文春の報道によると、千葉県の建設会社から都市再生機構(UR)とのトラブル解決の謝礼などとして甘利氏が現金計100万円を直接受け取った。秘書を含め甘利氏側への現金や接待などは証拠が残っているものだけで1200万円に上るという。
 甘利氏は現金の授受を認め、政治資金報告書に記していると説明した。ただ、金銭提供の趣旨などに曖昧さが残り、秘書が受領した部分について一部を流用していたとし、監督不行き届きを認めた。
 自らの違法性は否定し、秘書については不明をわびる。閣僚辞任という形を整えつつ、秘書に不始末の責任を押し付けた印象を拭えない。
 菓子折りに入った封筒に気付いていながら、大臣室などで現金をあっさり受け取り、秘書に処理を指示するだけにとどまった甘利氏の金銭感覚は正常か。構えの緩さは否めず、疑惑を呼び込んだ責任を免れない。
 秘書らの対応などについては調査途上で、甘利氏の辞任で幕を引いてはならない。「口利き」があったのか否かを軸に引き続き、詳細な聞き取りを進めるなど、疑惑の全容解明を急ぐのは当然だ。
 「信なくば立たず」。政治の要諦を持ち出すまでもなく、甘利氏はさらに説明を尽くす責務を負うことを忘れてはならない。
 疑惑報道をめぐっては、隠し録音や写真の存在を踏まえ、自民党内には「(甘利氏は)わなを仕掛けられた」(高村正彦副総裁)などと、同情論が出ていた。確かに特異な側面はあるが、身内に甘いと言わざるを得ない。
 高木毅復興相の選挙区内での香典支出問題もくすぶる。「自民1強」の緊張感を欠いた国会で、襟を正す機会にもしなければならない。


2016年01月29日金曜日

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