社説
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公判前整理手続き/長期化に厳格な歯止めを

 長期化の弊害が叫ばれながら、一向に改善されない裁判員裁判の「公判前整理手続き」について、最高裁がようやく実態を検証する作業に乗り出した。2016年度中にも結果を取りまとめ、具体的な対策を講じるという。
 裁判員裁判対象事件の起訴から一審判決までの期間は、かつて職業裁判官がほぼ月1回ペースで開いていた「裁判官裁判」の時代より長くなっている。最高裁が12年にまとめた報告書によると、裁判員制度開始前の06〜08年は平均6.6カ月だったのに対し、開始後の09年5月〜12年5月は8.5カ月だった。
 連日開廷が原則の裁判員裁判で審理の日数は短縮されたにもかかわらず、ほとんどの事件で、公判前整理手続きが長期にわたり、迅速な裁判を妨げている。
 被告の長期拘留につながる重大な人権問題であることは言うまでもない。公判の開始が遅れれば、その間に証人らの記憶が薄れてしまう懸念もある。最高裁は強い指導力で法曹界の結束を促し、この問題に決着をつけなくてはならない。
 最高裁によると、公判前整理手続きの平均期間は裁判員制度が始まった09年は2.8カ月だったが、翌10年は5.4カ月に延び、12年は7.0カ月になった。その後、2年連続でやや短縮したものの、昨年は10月末時点で7.3カ月で、再び延びる見通しになっている。
 公判前整理手続きは、裁判を迅速に進めるため、裁判所と検察側、弁護側の双方が初公判前に協議して争点を絞り込み、審理のイメージを共有するのが目的だ。検察側が証明する事実と証拠を示し、弁護側がそれらに対する主張などを明らかにしていくといった流れになることが多い。
 手続きは非公開で、少しでも審理を有利に進めようと、証拠や証人の採否をめぐり、双方が「暗闘」を延々と繰り広げることも珍しくない。長期化に加え、内向きな協議に終始し、裁判員や事件の被害者・遺族らの視点が反映されないといった批判も強い。
 昨年10月末までの裁判員裁判計8139件のうち、公判前整理手続きが3年を超えたケースは5件もあった。
 一刻も早く事件の真相を明らかにしてほしいと願う被害者・遺族にとっては、耐え難い時間に違いない。時間の経過とともに事件が風化することへの不安も募る。手続きの公開や短縮を求める声は、決して無視できない。
 一方、福島地裁郡山支部で13年3月にあった強盗殺人事件の裁判員裁判では、裁判員を務めた女性が、生々しい殺害現場の証拠写真を見たことなどで急性ストレス障害になったとして国に損害賠償を求め、提訴する事態になった。
 一、二審とも女性の請求は棄却されたが、公判前整理手続きで一定程度、外部の視点から裁判員の精神的な負担が考慮されていれば女性の苦痛は緩和できたはずだ。
 公判前整理手続きの長期化は、裁判員制度の開始当初から懸念されていた問題だ。手続きの閉鎖性を含め、改善の余地は大きい。まさに法曹界の知恵が試されている。


2016年02月01日月曜日

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