社説
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ハンセン病集団提訴/家族の差別被害早期救済を

 国の誤った隔離政策で差別や偏見の被害を受けたとして、ハンセン病元患者の子どもら家族がきのう、国に謝罪と損害賠償を求める初の集団訴訟を熊本地裁に起こした。
 原告には東北も含めて全国から59人が参加し、今後は追加提訴も予定されている。
 積み残しになっていた重い課題にこの社会がきちんと向き合って、答えを出すべき時が来たと言えるだろう。
 家族に与えた過酷な苦しみを社会全体で直視する機会と捉えるべきであり、国は司法判断を待つまでもなく、早期に責任を認めて救済の仕組みづくりに動いてほしい。
 ハンセン病救済では、国の隔離政策を憲法違反と断じて患者に賠償責任を命ずる判決が2001年に確定、政府と国会が過ちを認め謝罪し、補償の仕組みが動きだした。
 しかし、家族に対する謝罪や差別被害を救う措置までは設けられなかった。死亡した元患者の賠償請求権を引き継ぐ権利がある場合でも、元患者の家族であることを隠したいとして、請求を見送っているケースがあるという。
 強制隔離政策の根拠となったらい予防法の廃止(1996年)から20年になり、この3月末で損害賠償請求権が消滅することを受けて、集団提訴は準備されてきた。
 声を上げることすら困難な状況の中、期限に追い込まれる形で家族らが立ち上がったことの意味をまず私たちは重く受け止める必要がある。
 元患者の家族が単独で起こした訴訟では昨年9月、鳥取地裁判決が一般論ながら、国の賠償責任を認める初の司法判断を示している。
 「国は患者の子どもに対する偏見を排除する必要があったのに、相当の措置を取らなかった点で違法だった」として、家族への差別解消に国が積極的に取り組まなかった過ちを明確に指摘した。
 判決は今回の集団訴訟でも原告側の論拠の一つとして重みを持つことになるだろう。
 両親が強制隔離され、「孤児」として人生を歩まざるを得なかった人がいる。
 親がハンセン病患者であることを理由に結婚目前で破談になった人がいる。
 地域の差別を恐れて患者の帰郷を避けた過去を悔やみ続ける人たちもいる。
 石を投げられる、学校でいじめに遭う、就職先が閉ざされる…。数々の差別にさらされ、おびえてきた人たちの苦悩を思えば、感染力が弱く治療薬で完治する病にもかかわらず、隔離政策を漫然と続けた国の責任が家族にも及ぶと考えるのは当然ではないか。
 家族らは「差別と偏見は終わっていない。今も続いている」と訴えている。
 名乗り出られない多くの家族、家族への影響を心配しながら療養所で余生を送る入所者たちの思いを社会はいまこそくみ取り、支援に向けて一歩を踏み出すべきだ。
 ハンセン病関連では、患者が被告人となった裁判を事実上非公開で審理した「特別法廷」の差別についても、最高裁の検証議論がようやく昨年から本格化している。
 深刻な人権侵害を続けた暗黒の歴史に向き合う重みをもう一度確かめ合いたい。


2016年02月16日火曜日

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