社説
  • 記事を印刷

使用済みMOX燃料/難題先送りの再稼働急ぐな

 通常の原発より始末の悪い「核のごみ」を排出する。新規制基準に基づく原子力規制委員会の審査でも、その宿命的な欠点は問われていない。 関西電力高浜原発(福井県高浜町)の4号機が近く再稼働し、先月下旬に運転を再開した3号機と同様に「プルサーマル発電」を開始する。完全に行き詰まった核燃料サイクルの一翼を担わされての再稼働であることに、より注意を向けるべきだろう。
 使用するのは一般的なウラン燃料ではなく、プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料。通常の原発から排出される使用済みウラン燃料を再処理し、プルトニウムと燃え残ったウランを取り出して作る。
 MOX燃料は、ウラン燃料に比べ、毒性の高いネプツニウムやアメリシウムといった放射性物質を約5倍も発生させる。使用後も極めて高い放射線を放ち、比較的長く発熱量が減少しないといった管理上の難点もある。
 通常の使用済みウラン燃料は、とりあえず青森県六ケ所村に運ばれ、再処理することになっている。しかし、使用済みMOX燃料は六ケ所村の再処理工場では取り扱うことができず、処分方法は何一つ決まっていない。原発内で長期間、保管せざるを得ないのが現状だ。
 3号機に加え、4号機が稼働すれば、高浜原発は国内の商用炉で最多となる約18.5トンの使用済みMOX燃料を抱えることになるという。同原発の貯蔵プールは今後7〜8年で満杯になる見通し。保管期間の見通しもつかない使用済みMOX燃料は安全上、深刻な懸念材料となる。
 使用済み核燃料の全量リサイクルを掲げる国は、使用済みMOX燃料向けに「第2再処理工場」を建設する方針だった。2005年策定の原子力政策大綱には「10年ごろから検討を開始」すると明記。その後「45年ごろの操業開始」(06年策定の原子力立国計画)を目指すとしていたが、東京電力福島第1原発事故で議論はストップしたままだ。
 六ケ所村の再処理工場でさえ、試運転中の事故、トラブルで完工の延期が繰り返され、着工から20年以上がたった今も「未完成」となっている状況を踏まえれば、第2再処理工場が果たして実現可能なのか、大いに疑問だ。
 プルサーマル発電は、MOX燃料の主な活用先と想定された高速増殖炉の原型炉「もんじゅ」の相次ぐトラブルで利用が進まず、だぶついていたプルトニウムの消費策として便宜的に始まった。軍事転用可能な余剰プルトニウムの保有は、核不拡散の観点から国際的な批判を招くからだ。
 プルサーマル発電をめぐっては、核反応を調節する制御棒の利きが悪いなど、MOX燃料の取り扱いの難しさが指摘されてきた。ウラン燃料しか想定していない軽水炉での利用には慎重であるべきだとする専門家も少なくない。
 福島第1原発事故の後もなお、核燃料サイクルにしがみつき、難題の「核のごみ」対応を先送りしようとしている。高浜原発の再稼働からは、そうした国と電力会社の姿が透けて見える。


2016年02月24日水曜日

  • 記事を印刷
先頭に戻る