社説

性的少数者の差別/立法急ぎ人権後進国返上を

 性的少数者(LGBT)に対する差別解消に向け、超党派の国会議員連盟が立法作業に着手した。民主党が作成した法案骨子に検討を加え、夏の参院選までに中間報告をまとめて法案の早期提出を目指すという。
 東京都渋谷区が昨年11月、同性カップルを結婚に準じる関係と公的に認める条例を制定したことなどを機に、これまで表面化してこなかったLGBTへの差別や偏見の問題にも注目が集まっている。機運を逃さず、必要な法整備を進めてほしい。
 世界では約3分の1の国にLGBTに対する差別禁止法があり、日本政府は国連人権理事会から差別撤廃措置を講じるよう勧告も受けている。2020年の東京五輪・パラリンピックを前に国際的にも注目されるだけに、後進国との汚名返上が求められる。
 昨年12月、性的少数者が職場の処遇改善を求めた初の裁判があった。訴えたのは戸籍上は男性だが心は女性の経済産業省職員で、職場で女性トイレの使用を制限されたり、上司から「手術を受けないなら男に戻ってはどうか」などと言われたりしたという。
 民間企業に対し多様な働き方を求める立場の中央省庁での取り組みの遅れは、まだまだLGBTへの理解が進んでいない実態を映し出す。
 渋谷区の条例をめぐっても地方議員から人権を否定するような差別的発言が相次いだ。埼玉県では県や県教委、県議会がLGBTによる成人式の後援申請を却下していた。
 民主党の法案骨子は、恋愛感情がどの性別に向かうかの「性的指向」と、自分の性別をどう認識するかの「性自認性」を理由にした差別を禁止する。
 政府に基本方針、地方自治体に基本計画の策定義務を課し、行政や企業の不当な差別的取り扱いを禁止。学校では教職員や子どもへの啓発や相談体制の整備を義務付ける。
 超党派議連には自民、公明、民主、維新、共産、社民など約50人が名を連ねる。法制化について会長の馳浩文部科学相が「与野党の主張をぶつけ合うのではなく、超党派で取り組むべきだ」と述べたのはもっともなことだろう。
 その点から自民党の動きが気に掛かる。党内に新たな組織をつくって法制化の議論を始めることにした。LGBT対策が野党主導で進んできたことから、参院選を前に党としても積極姿勢をアピールする狙いがあるとみられるが、もともと伝統的な家族観を重んじる意見が党内には強いだけに、慎重論の台頭によって議連の議論にブレーキが掛からないか心配だ。
 日本では成人の7.6%がLGBTに該当するという調査結果がある。ただ、学校や職場でLGBTであることを打ち明けられない人が約9割に上るとも報告されている。彼らが「見えない」「隠れた」存在としての生き方を強いられ、活躍する機会を奪われているとすれば、社会にとっても大きな損失だ。
 必要なのはLGBTがいない前提の社会システムの転換だ。性の多様性に対する社会の理解を深める一歩として差別禁止法の制定が急がれる。


2016年02月28日日曜日


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