社説

高浜原発運転差し止め/なし崩し的な再稼働へ警鐘

 運転中の関西電力高浜原発3号機、再稼働直後のトラブルで停止中の4号機(ともに福井県高浜町)について、大津地裁がきのう、運転を差し止める仮処分決定を出した。
 関電は速やかに不服を申し立てるとのコメントを発表。確定までさらに時間を要することになるが、司法判断で稼働中の原発が止まるのは全国初。原子力規制委員会の新規制基準への適合性審査に合格し再稼働した原発の運転を禁じたのも初めてだ。
 高浜原発から約70キロも離れた隣接の滋賀県の住民が申し立てた仮処分を認めた点も注目される。再稼働を進める政府のエネルギー政策や、再稼働を前提とする電力会社の経営戦略への影響は避けられないだろう。
 3、4号機の運転差し止めをめぐっては、二転三転の特異な経過をたどった。
 大津地裁が2014年に申し立てを却下した。福井地裁が同年、再稼働を認めない仮処分を決定したが、福井地裁が15年、決定を取り消し、そして今回、大津地裁が運転差し止めの仮処分を決定した。
 上級審で覆るなどして、差し止めが「確定」したケースはないが、東京電力福島第1原発の過酷事故後、地裁段階で複数の裁判官が運転差し止めを認めた事実は軽くない。司法判断が揺れ、今後相次ぐ可能性も否定できまい。
 安全神話がもろくも崩れた福島の事故を受け、安全性の確保に懸念が生じ、「世界一厳しい」と称する新たな規制基準に適合しても、安全性の「お墨付き」と評価しきれない司法の認識を示すと受け止めるべきだ。
 今回の大津地裁は「福島の事故を踏まえた過酷事故についての設計思想や外部電源に依拠する緊急時対応、耐震基準策定に問題点があり、津波対策や避難計画に疑問が残る」と判断した。
 差し止めの決定理由は詳細で、根本的な課題を突き付けられた政府や関電の衝撃は小さくないに違いない。
 今回の裁判長は前回、「再稼働は迫っておらず必要はない」と差し止めの申し立てを却下した。同じ裁判長が再稼働後の今回は運転に「否」の判断を示しており、その真意にも目を凝らす必要がある。
 福島の事故について、原因などの解明が尽くされていない中で、誰が安全性を保証し、不幸にして事故が発生した場合、誰が責任を負うのか。多くの点で曖昧なままだ。
 新規制基準ができても事故ゼロを担保するものではなく、万一に備える避難については、規制委の審査対象にもなっていない。
 各種世論調査で早期の原発再稼働に否定的な見方が多い。そうした中、4号機は再稼働直後のトラブルで原子炉が緊急停止。国民の信頼回復がまた遠のく状況にもある。
 不安を置き去りにして、原発を再稼働しても順調な進展は望み難い。
 福島の事故から5年。今回の司法判断は、なし崩し的に原発回帰に動く政府や電力会社に対する「拙速」の戒めだろう。司法の問題提起に真(しん)摯(し)に向き合い、まずは安全と信頼のレベル向上に努めるべきだ。


2016年03月10日木曜日

先頭に戻る