社説
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プロ野球金銭問題/うみを出し切るときだ

 開幕直前の高揚感を台無しにするような事態に、ファンは怒り、あきれている。
 プロ野球巨人の選手をめぐる野球賭博が今月初旬に再燃したのに続き、今度は巨人、東北楽天など多くのチームで、ゲームの勝敗を対象にした選手間の現金授受が常態化していたことが明るみに出た。
 疑惑や金銭に絡む混迷はどこまで広がるのか。もはや一部の球団というより、プロ野球界全体の体質や姿勢までが問われる深刻な事態と受け止めなければなるまい。
 関係球団が姿勢を正すのはもちろん、日本野球機構(NPB)は、後手に回って混迷を深める結果を招いた自らの対応の甘さを反省するとともに、今度こそ徹底した調査に踏み込んでもらいたい。
 うみを出し切る覚悟なくして、球界の発展や信頼回復の道はないと知るべきだ。
 現金授受問題は、やりとりされる金額が少額なことをもって野球賭博とは異質と受け流す向きがある。仲間内で士気を高めるための「祝儀」という説明に一定の理解を示す声もファンの中にはある。
 しかし、チームの中心選手たちが公式戦の勝ち負けに応じて日常的に金銭のやりとりを繰り返していた、という問題だ。野球賭博が現実にはびこっていた事実を見れば、プレーに金銭を絡める行為を正当化できる余地はない。
 試合結果をめぐる金銭のやりとりを選手たちが不適切と判断できないまま受け入れて放置していた感覚が、賭博の誘惑が入り込む隙になったことは容易に想像できる。
 疑惑の発信元になった「球界の盟主」巨人の緩みが非難されるのは当然として、感覚の鈍さはNPBも同じだ。
 野球賭博調査の過程で巨人の現金授受を把握していながら、NPBは「野球協約違反には当たらない」として詳細に公表していなかった。
 遠慮はなかったと信じたいが、協約違反か否かの検討にとどめ、球界の体質に疑義を持たれる道義的な課題を共有することなく、内々に処理した姿勢に強い危機意識はうかがえない。手ぬるいと指摘されても仕方ないだろう。
 野球賭博問題が昨秋、巨人3投手の処分で一区切りとなりながら、今月に入って新たな投手の関与が明らかになるなど、プロ野球では不祥事の後追い処理が続いている。
 ほかにもまだ何かあるのではないか、と思われるような調査や処分を繰り返していては信頼回復など程遠い。
 野球賭博の全容解明はもちろんのこと、現金授受問題に現れた球界の悪弊や暗部を根本から問い直すような取り組みが求められている。
 外部の目を入れながら調査を尽くし、問題を総合的に検証して抜本改革に乗りだす方針を早急に示すべきだ。
 不祥事では、清原和博被告の覚せい剤取締法違反事件も影を落とす。子どもから高齢者まで裾野の広い人気スポーツをめぐる不祥事は、社会に与える影響も大きい。
 この混乱をいっときの騒動とやり過ごすようでは、夢と希望を託すファンの思いには応えられない。開幕まで1週間、暗雲を振り払う真(しん)摯(し)な一歩を社会は注視している。


2016年03月18日金曜日

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