社説
  • 記事を印刷

温暖化対策計画/原発の活用 慎重に判断を

 地球温暖化を肌で感じるような暖冬だった。雪が少なかった分、夏の渇水など影響が心配だ。そんな中、政府が新たな「地球温暖化対策計画」をまとめた。5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)までに閣議決定するという。
 目標実現のために産業界だけでなく家庭での省エネなどの取り組みを求める。一方で原発の稼働も頼りにしており、その評価は揺れる。
 計画では、中期目標として国内の温室効果ガス排出量を、2030年度までに13年度比26%削減する。長期目標として50年までに80%削減を明記する。
 具体的には、エネルギー部門については、再生可能エネルギーの最大限の導入、火力発電の高効率化、安全性が確認された原発の活用などにより、二酸化炭素(CO2)排出量を28%削減する。
 発光ダイオード(LED)照明への全面切り替え、光熱費ゼロの住宅やビルの普及などで家庭、オフィスの排出をそれぞれ約40%削減。運輸は28%、産業は7%減らす。
 多くの家庭では、少し値の張るLED照明を導入したり、ハイブリッド車(HV)や電気自動車(EV)に乗り換えたり、節電したりするなどして、既に温暖化対策に貢献している。
 懸念されるのは産業界、電力業界の取り組みだ。
 政府の考えでは、最大のCO2排出源である火発については、効率の良い発電所の新設は認めるが、古くて効率の悪い発電所は廃止や休止を促す。温室ガスのほとんど出ない再生可能エネルギーの推進はもちろんだが、原発の稼働拡大も前提としている。
 政府が昨年示した電源構成比率は、原発20〜22%、再生可能エネルギー22〜24%などとなっている。新規制基準で定められた原発の運転ルール「原則40年」を適用すると、10年に28.6%だった原発比率は30年に最大でも15%に低下するという。
 つまり、原発比率20〜22%の実現のためには、老朽炉を何基も運転延長する必要がある。実際、原子力規制委員会は2月、40年を超える関西電力高浜原発1、2号機(福井県)に審査合格を出した。40年超でも規制委が認めれば、1回に限り20年延長できる。
 あくまで例外のはずだったが、このままではなし崩し的に40年超の他の老朽原発も再稼働しかねない。
 共同通信の最近の調査によれば、全国の知事と市区町村長の65.6%が原発の比率を下げるか、将来的にゼロとすることを求めている。内訳は比率低減44.6%、全廃21%だった。原発への安全性や核廃棄物処理への不安が背景にあるのは間違いない。
 経営に資するとしてエネルギー業界は原発の再稼働を進めたい意向だが、福島第1原発事故の現場では依然、溶融燃料回収のめどが立っていない。核廃棄物の最終処分問題も出口が見えないままだ。
 原発から出る核廃棄物は生命を脅かす。発電時にCO2を出さないことをもって、クリーンエネルギーと称するには違和感を持たざるを得ない。温暖化対策を進める上で原発の扱いは慎重であるべきだ。


2016年03月28日月曜日

  • 記事を印刷
先頭に戻る