社説

婦人参政権70年/1票行使して山を動かそう

 今年は戦後、女性が国政で初めて参政権を行使して70年の節目の年。改めて原点を思い起こし、あす公示の参院選(7月10日投開票)では有権者として立候補者として、女性の存在感を示してほしい。
 参政権の付与は当時の連合国軍総司令部(GHQ)の指示だった。敗戦によってもたらされた産物なのだが、活動家の平塚らいてう、市川房枝らが戦前から熱心に取り組んできた婦選運動が、原動力になったのは間違いない。
 1946年4月の総選挙で、約1380万人の女性が初めて投票し、全議員の8.4%に当たる39人の議員が誕生した。現在、衆院議員は45人(9.5%)、参院議員は38人(15.7%)。70年前と状況がそう大きく変わっていないのに驚く。
 国際的に見ても、日本の女性議員の割合が極端に低い。列国議会同盟(IPU)による下院(衆院)の調査では、2016年2月の女性比率ランキングで191カ国中、156位と下位に沈んでいる。
 米国では民主党大統領候補として、ヒラリー・クリントン氏の指名が確実視される時代。ローマでは初の女性市長が当選した。こんな低い数字では先進国ととても威張れたものではない。
 政界進出を阻んでいるのは何か。一つは根強くある「男尊女卑」の意識だろう。
 昨年5月の国会審議で象徴的な場面があった。辻元清美衆院議員が、安倍晋三首相から「早く質問しろよ」とヤジを飛ばされた。「私が男だったら(ヤジは)飛ばさなかったろう」と辻元議員。
 野党の猛抗議で陳謝を余儀なくされたが、安倍首相の心根が透けて見えたと受け止められた。「女性活躍社会」の看板が泣くのではないか。
 女性の出産・育児や介護負担の問題も、政界進出を阻む壁として挙げられる。ハードな議員活動との両立は、極めて厳しい。選挙資金の問題もある。議会や党全体が全面的にバックアップする仕組みづくりが必要だろう。
 女性が関われば、独自の視点を反映した政策が進展する、との声が少なくない。男女共同参画社会基本法、ドメスティックバイオレンス(DV)防止法などがいい例だ。
 女性は人権や生命に対する感度が高く、弱者への共感性が強いとされる。ブログをきっかけに波紋を広げた待機児童問題。安保法や原発再稼働に反対する市民デモには若い女性やママの姿が目立つ。
 こうした政治への関心の高まりを、どう投票に結びつけていくのか。過去5回の参院選投票率に限って見ると、女性が男性を上回ったのは1回だけ。前回(13年)は男性が53.50%で女性は51.79%にとどまっている。
 89年の参院選ではマドンナ・ブームが起き、22人の女性議員が当選した。女性の割合が1桁台から17.5%に跳ね上がった。当時、社会党の土井たか子委員長は「山が動いた」との名言を残す。
 「権利の上に眠るな」。市川房枝の口癖だったという。せっかく獲得した参政権なのに、という思いが込められていたのではないか。参院選では覚醒して山を動かそう。


2016年06月21日火曜日


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