社説

原発新基準から3年/「骨抜き」と「後退」が際立つ

 このまま原子力推進に突き進んでいって、本当に大丈夫なのだろうか。
 原子力発電所などの安全性を評価する新規制基準が設けられてから今月で3年が過ぎたが、発足当初に比べ原子力規制委員会の後退姿勢が目立ってきた。
 原発再稼働を推し進めようとする電力各社などに厳しい姿勢で臨むことが求められたはずなのに、毅然(きぜん)とした対応に乏しい。
 複数の原子炉が一気に炉心溶融(メルトダウン)に見舞われた福島第1原発事故の教訓が、はるかかなたにかすんでいるようにも思える。
 不信感を抱かれかねない一例になったのが、原発の運転延長問題。規制委は先月初めて、運転開始から40年が経過していた関西電力・高浜1、2号機(福井県)の延長を認めた。期間は「最長20年」なので、結局は60年もの長々期運転が可能になる。
 原発の運転期間は福島第1原発事故の後、原子炉等規制法によって「原則40年」と決められた。事故でウラン燃料が溶融した1〜3号機は運転開始から35〜40年の老朽原発だったことから、法律に「寿命」が盛り込まれたという経緯がある。
 原発の耐用年数がおよそ30〜40年だろうということは、事故のずっと以前から指摘されていた。たとえ重大な不具合が見つからなくとも、廃炉の時期を決めておくのは合理的な事故予防策のはずだ。
 原子炉等規制法では確かに最長20年の延長も認めているが、規制委が発足した2012年9月に田中俊一委員長は「40年を超える原発は厳しくチェックし、運転させない姿勢で臨むべきだ」とまで話していた。
 ところが、今年になって田中委員長は「お金をかければいくらでも(延長のための)技術的な点は克服できる」と発言しているのだから、理解に苦しむ。
 これほど発言がぶれるのでは、「40年で廃炉」を本気でやり遂げようとしていたのか疑わしくなる。原子力の安全規制を担当する官庁のトップが、自ら信頼を失わせているようなものだろう。
 再稼働した九州電力・川内原発(鹿児島県)への対応も不可解だ。福島第1原発事故を教訓に免震構造の事故対策棟を新設するはずだったが、あっさりと撤回され耐震構造になってしまった。
 再稼働の審査では免震棟建設を約束したのだから、運転の是非も含めて厳しく対応するべきだった。安易に追認するようでは国民の側に立った規制とは言えない。
 福島第1原発事故の後、安全審査は一新された。事故の反省をしっかりと踏まえ、原子力を厳しくチェックすることが求められたからだ。
 新基準を運用する規制組織の役割は原発事故以前にも増して重大なのに、残念なことに疑問視されるような対応が相次いでいる。
 「規制」がいつの間にやら「推進」になったのでは、何のための新基準だったのか分からなくなる。5年前の福島第1原発事故を省みて、自らの立ち位置を見つめ直すことが迫られている。


2016年07月17日日曜日


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