社説

Jヴィレッジ再整備/復興のシンボルにしたい

 かつて「Jヴィレッジ」(福島県楢葉町、広野町)はアスリートにとって、厳しい練習に明け暮れた思い出の地。憧れの施設でもあった。
 ラグビー日本代表戦で歴代最多の98試合出場を誇り、2019年のワールドカップ(W杯)日本大会への出場を目指す大野均選手(東芝、日大工学部卒)=郡山市出身=もその一人だ。04年、代表に初めて選ばれ、緊張しながら門をくぐった。
 天然芝のグラウンド10面が並ぶ広大な緑の大地で連日続く過酷な強化合宿。支えとなったのは、古里・福島の食材を使った食事だった。
 ところが、東京電力福島第1原発事故が、施設の存在を大きく変えてしまった。営業休止を余儀なくされ、事故対応の拠点として使われてきた。事故から5年半、ようやくトレーニングセンターとしての元の姿に戻る「青写真」が示された。
 都内で先日、記者会見した福島県の内堀雅雄知事によると、18年夏の一部再開、19年4月の全面再開を目指すという。同席した大野選手は「Jヴィレッジが東北全体の復興のシンボルになると期待している」と語った。
 従来の施設やグラウンドを再整備するほか、新たな魅力を加えようとグラウンド1面規模の人工芝の屋内練習場を新設する。総工費22億円から助成金を除いた7億円分を全国からの寄付で賄う。
 「スポーツの力で復興を」という福島県の呼び掛けに、全国から多くの賛同が得られるだろう。スポーツ関係者が、少しでも多く施設を利用することが支援につながる。
 サッカーの日韓W杯が開催された02年には、アルゼンチン代表がキャンプを張り、J1のベガルタ仙台と練習試合を行った。利用者の裾野は広く、夏休みにはスポーツ少年団の合宿で使われた。
 日本ラグビー協会は19年W杯、日本サッカー協会は20年東京五輪の代表強化拠点などとして積極的に活用する考えだという。
 W杯は釜石市、五輪は宮城県利府町が競技会場となることもあり、他国の代表の事前合宿誘致なども期待される。Jヴィレッジの利用拡大は「復興五輪」の一つの形にもなるだろう。
 スポーツが地域振興に果たす役割は国も着目している。 スポーツ庁の鈴木大地長官は「スポーツで稼ぐということを国が発信したい」と機会を捉えて繰り返す。スポーツを地域資源として戦略的に活用。地域経済を活性化させる施策の一つとして、独自のスポーツ体験で集客を図るスポーツツーリズムの普及に力を入れている。
 従来の「観光目線」では高低差が激しく、集客が難しいと考えられた山あいの地域も、「スポーツ目線」で評価すれば、崖登りや山岳マラソンを楽しめるという考え方だ。同庁は「スポーツ目線でポジティブに見直してみませんか」と呼び掛ける。
 東北各地にもスポーツ資源が埋もれていないか。見直す契機になる。観光や文化との融合や地域経済などの視点を意識すると、新たな魅力が開拓されるかもしれない。


2016年09月19日月曜日


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