社説

防災・減災 津波の情報伝達/「過小評価」は信頼を損ねる

 福島県沖で起きたマグニチュード(M)7.4の地震の余震がまだ続いている。これまで津波に関わる新たな状況やデータが判明しており、情報伝達の課題が改めて浮き彫りになった。
 気象庁は今回の地震と津波を十分に検証し、津波の正確な予想に加え、警報や注意報の出し方も再検討すべきだ。
 この地震では、発生直後に津波警報と注意報が発令され、東北の太平洋岸を中心に約1万人が避難した。最大の津波を観測したのは仙台港(仙台市宮城野区)だった。
 東日本大震災以降で最も高い1.4メートルになったが、宮城県に当初出されたのは「津波注意報」。1メートルを超える津波が実際に観測されてから「警報」に切り替えるという、まずい対応になった。
 さらに東北大災害科学国際研究所の調査では、宮城県東松島市の漁港で地面から2.2メートルの高さまで浸水していた。津波の高さは3メートルに達していた可能性があるという。
 警報と注意報とでは、受け止める側の切迫感はかなり異なる。地震からわずか2、3分で津波を正確に予想するのは簡単な作業ではないにしても、第一報の段階で過小評価するような事態は絶対に避けなければならない。
 地震が起きたのは22日午前5時59分で、震源域はいわき市の東北東約70キロ、深さは30キロ。気象庁は3分後の6時2分、福島県に津波警報、青森県から千葉県にかけての太平洋岸に注意報を出した。高さは福島が3メートル、それ以外の地域は1メートルと予想された。
 基準では、津波の高さは警報なら1〜3メートル、注意報は0.2〜1メートルとなる。3メートルか1メートルかは実際の避難行動にかなり影響するはずであり、福島と宮城では警戒感に落差があったことだろう。
 ところが地震から約2時間後の午前8時3分、仙台港に設置されていた国土交通省の観測計が1.4メートルを記録、その6分後に宮城は警報に切り替えられた。
 地震から2時間以上もたってから、注意報が警報へ「格上げ」されるという異例の経過をたどってしまった。宮城の沿岸自治体の中には、あわてて対応したところもあったのではないだろうか。
 津波の高さは「断層のずれ方などを元にしたシミュレーションの結果と、過去の地震と津波のデータも考え合わせて予想する」(仙台管区気象台)というが、宮城については低く見積もってしまった。
 津波の高さを予想するためには、地震の規模や深さ、海底の地形、断層のずれ方などさまざまなデータを考慮しなければならないが、より精度を高めるよう取り組まなければならない。
 さらに情報の出し方も改善の余地がある。避難にとって第一報は決定的な役割を果たすのだから、安全サイドに立った内容にして広く警戒を呼び掛けるべきだ。


2016年12月04日日曜日


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