社説

高野病院存続問題/原発被災地の医療どう守る

 東京電力福島第1原発が立地する福島県双葉郡で唯一、入院医療を続ける広野町の民間病院が、存続の岐路に立たされている。
 昨年末、院長の高野英男さん(81)が自宅の火災で死亡し、常勤医と管理者が不在となった高野病院だ。
 高野病院は、今も療養を中心に約100人が入院している。存続の行方は患者の今後を左右するだけではない。原発事故被災地の復興に欠かせない地域医療の再生に影を落とす恐れがある。
 広野町は原発事故直後、独自に避難指示を出し、一時は全町避難となった。それでも高野さんらは入院患者と病院にとどまって診療を続けた。 被災地の医療を守ってきた病院の危機に、応援の輪が広がっているのは心強い。
 県内の医師らが、支援する会を結成、ボランティアで診療を手伝い始めた。こうした医師らの宿泊費などに充てるための募金は、開始から2日で目標の250万円を突破。この2〜3月に期間限定で常勤する医師も名乗り出た。
 4月以降の常勤医には、福島県立医大が派遣に前向きな姿勢を示す。理事長兼学長に4月就任予定の竹之下誠一氏は記者会見で「できるだけ支援をしたい。(双葉郡など)浜通りの医療体制再構築は使命だ」と強調した。
 ただ、これで解決するとは言い切れない。経営の安定という課題は残る、とみられるからだ。仮に立ち行かなくなれば「患者を守りたい」と支援を決めた関係者の思いは、水泡に帰してしまう。
 双葉郡の地域医療は綱渡りの状況にある。県によると、郡内では原発事故前、6病院と48診療所があったが、今年4月の稼働見込みは1病院、12診療所にとどまる。もちろん病院は高野病院だけだ。
 双葉郡の医療体制に関しては、県が2015年9月、国や関係自治体による検討会を設置。その結果、2次救急を担う県立施設「ふたば医療センター」を富岡町に18年4月開院を目指して整備することが決まったが、それで十分とはとても言えないだろう。
 医療センターの計画病床数は30と少ない。急性期を脱した患者は転院を迫られることが想定され、慢性期や療養期の患者の受け入れ先は他に必要になる。
 双葉郡では今春、富岡、浪江両町の避難指示が一部地区を除き解除される予定。既に解除された周辺町村も含め、住民の帰還が進むかどうかが大きな課題で、安心して暮らせる環境を取り戻せるかどうかが大きな鍵となる。
 「医療は住民帰還に欠かせないインフラだ」。高野病院を支援する会事務局長を務める南相馬市立総合病院の尾崎章彦医師は強調する。
 原発被災地の地域医療をどう再生していくか。高野病院を巡る問題が突き付けている課題に、県など関係機関は早急に向き合う必要がある。


2017年01月18日水曜日


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