社説

「共謀罪」法案/危険な本質は変わらない

 通常国会がきょう召集される。焦点の一つになりそうなのが、いわゆる「共謀罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案。政府は後半国会での提出を目指しているが、何しろ過去に3度も廃案になったいわく付きの法案である。
 多少手直ししても、実行行為がない共謀などの段階で数多くの犯罪を処罰しようとする危険性は変わりない。法案提出を見送り、同時に共謀罪も最終的に断念すべきだ。
 3年後に迫った東京五輪・パラリンピックへの備えというのであれば、別の手だてで検討を進めればいい。
 共謀罪は2003年以降、3度国会に提出され、いずれも野党の強い反対に遭って廃案になった。昨年秋の臨時国会でも提出が検討されたが、結局見送っている。
 昨年は罪名を「共謀罪」から「テロ等組織犯罪準備罪」へ、対象も「団体」から「組織的犯罪集団」へ修正する方針だった。構成要件についても、共謀だけでなく「実行の準備行為」を新たに加える考えを示していた。
 提出されれば4度目となる法案では、さらに対象犯罪の数を減らすことなどが検討されているとみられる。
 これまでの法案では、一気に676もの犯罪が共謀だけで処罰可能になったが、200〜300まで絞り込む方向だという。それでもかなりの数になる。乱用されてしまったら、国民の人権を損なう危険性は同じだろう。
 当たり前のことながら、犯罪は基本的に実行に移さなければ罪には問われない。重大な結果をもたらしかねないようなケースでは、今の刑法などでも「予備」や「準備」、「陰謀」といった手前の段階で処罰可能だが、例外中の例外のケースだ。
 もし共謀罪が導入されれば理屈の上では、多くの犯罪が計画だけで摘発可能になってしまう。捜査の進め方によっては、極めて危険な社会になりかねない。
 内密に行われる共謀や準備を突き止めるためには、通信や会話の傍受などに頼ることになるだろう。日弁連は「市民のプライバシーに立ち入って監視するような捜査」の危険性を訴えているが、的外れとは思えない。
 共謀罪の議論が始まったのは「国際組織犯罪防止条約」がきっかけだった。政府は批准に共謀罪が必要と訴えてきたが、日弁連はなくとも可能だという立場だ。
 さらに日本はテロ防止関連の条約をかなり批准しており、対策は進んでいるとも日弁連は主張している。
 いずれにしても国際的なテロ対策と条約、共謀罪との関連について、国民の理解が深まっているとは思えない。
 刑法の原則と例外をひっくり返すような立法措置は到底認め難いし、もし反対はあっても数の力で押し切れるともくろんで提出するとしたら、もっての外だ。


2017年01月20日金曜日


先頭に戻る