社説

福島特措法改正/地元の不安払拭は国の責務

 東京電力福島第1原発事故で立ち入りを制限している帰還困難区域の復興策を柱にした福島復興再生特別措置法改正案が閣議決定された。
 今国会での成立を目指す法案は、おおむね福島県などの要望に応えた内容。ただ、復興策を具体化する段階で、地元の意向がきちんと受け入れられるかどうかなど、懸念される点が幾つかある。
 帰還困難区域に関しては、「特定復興再生拠点区域」(復興拠点)の整備が明記された。道路などのインフラ復旧と除染を国費で一体的に進め、5年後をめどに住民が暮らせるようにする方針だ。
 どこの、どの範囲を復興拠点に位置付けるか、除染やインフラ復旧をどう進めるか。法案では地元自治体が計画し、県との協議を経て国が認めることになっている。
 裏を返せば、国が首を縦に振らない限り、計画は前に進まないことになる。
 「認定段階で費用対効果を求められ、計画の絞り込みが行われる恐れがないとは言い切れない」。地元自治体の幹部の一人は指摘する。
 内堀雅雄福島県知事が「地元の意向を尊重し、柔軟に対応してほしい」と重ねて求めているのもこのため。地元が不安を払拭(ふっしょく)できずにいることを、国は肝に銘じてほしい。
 復興拠点内の除染に関しては、国費投入に批判がある。東電が除染費用を負担している従来の仕組みを変えることになるためだ。
 東電の資金不足による除染の滞りを回避する狙いだが、「事実上の東電救済」とのそしりは免れない。政府は今後の国会審議で、東電の責任を明確にした上で丁寧に説明する必要がある。
 改正案には、県が強く求めてきた「福島・国際研究産業都市(イノベーション・コースト)構想」の実現も盛り込まれた。原発事故で被災した浜通り地方にロボットなど新産業を集積させる構想だ。
 特措法に明記されることで、財政的な裏付けを持った国家プロジェクトとなり、大きな前進が期待できる。
 とはいえ、実現はそれほど簡単ではない。国や県はロボットや新エネルギー開発などの一大拠点化を目指すが、被災地はそもそも住民の帰還促進が課題となっている。
 産業を担う人々を呼び込むには、地域をどう変えるか、具体的な将来像を示す必要がある。生活環境の整備を一体的に進めることも不可欠だ。
 特措法から抜け落ちた課題も見落としてはならない。
 復興拠点は帰還困難区域の一部にしかできず、それ以外は地域再生の行方を見通せないままだ。
 政府は昨年末、福島の復興加速の基本指針を決定した。将来的に全ての避難指示の解除を目指すことを明記したことを忘れてはならない。
 改正案が抱える問題と積み残した課題の双方に、政府はしっかり向き合ってほしい。


2017年02月20日月曜日


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