社説

「共謀罪」閣議決定/「監視社会」に向かう危険性

 いわゆる「共謀罪」の導入に向けて政府はきのう、組織犯罪処罰法の改正案を閣議決定し、今の国会での成立を目指す姿勢を鮮明にした。
 過去に3度も廃案になった法案と比べると、「テロ等準備罪」へと名称や構成要件が変わり、適用は「組織的犯罪集団」に限られたが、一般人も影響を受けかねない危険な性格は依然残っている。
 法案も提出されたのだから、国会で徹底的に問題点を議論すべきだ。法案の内容に加え、今後予想される捜査手法についても、歯止め策の検討などが不可欠になる。
 共謀(計画)と準備の段階で立件しようとすれば、常識的には私的な通信の傍受や追跡といった捜査が必要。政府内には「通信傍受の対象外」との声があるものの、公権力による監視社会に陥りかねない危険性をはらむことにも十分注意しなければならない。
 共謀罪に対しては、酒の上の冗談で犯行を計画しただけでも犯罪として立件されかねない、と批判されてきた。そのためか政府は今回、「準備行為」も要件に加えた。実行のための資金調達や現場の下見などが該当するという。
 ただ、計画性が条文から消えたわけではないので、計画の段階から捜査が始まっても何ら不思議はない。
 以前は「団体」だった捜査対象も、「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」と変わった。政府は3年後の東京五輪に備えたテロ対策を強調してきた経緯がある。
 「テロ集団」などの言葉が法律のどこにもないことが批判されて表現が変わったが、では組織的犯罪集団が何を指すのかとなると、曖昧さは拭えない。
 実際にはおそらく、捜査する側が何らかの理由で「組織的犯罪集団の疑いあり」とみなせば、捜査に着手できるということになるのだろう。
 共謀罪が適用される犯罪の数は以前は600を優に超えたが、今回は277と半分以下になった。それでもかなりの数であり、テロとは縁が薄そうな犯罪も含まれる。
 結局、今回の法案でも国際的なテロ組織の取り締まりに特化しているわけではなく、一般国民に適用されることがないと言い切ることは困難。むしろ導入による「副作用」が心配になる。
 計画と準備のみで犯罪を摘発しようとすれば、電話やメールの傍受に頼ることになりかねないし、広範囲に移動を監視する必要も出てくる。通信傍受は今やかなりの犯罪で可能だし、衛星利用測位システム(GPS)の端末をひそかに車に取り付ける捜査も実際に行われている。
 傍受や監視は、容疑者と目される人物の周辺まで及ぶことも十分あり得るだろう。もちろん本人は何も知らないうちに。共謀罪の議論に当たっては、人権やプライバシーが危機にひんしかねないことも決して忘れてはならない。


2017年03月22日水曜日


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