社説

移住促進/子育て世代へアピール必要

 地方への移住を勧める催しは、体験者の暮らしぶりをありのままに伝えるのが最近の主流だ。地域の魅力をどうアピールするか。各自治体はイメージ戦略の知恵を絞る。
 JR東京駅前のビルで先頃あった移住応援イベントは、東北の魅力を各県代表が並んで訴えた。
 「1度訪れただけで自然環境の良さを気に入り、移住を決断しました」
 米沢市の黒田三佳さんが自信満々に語った。17年前、東京から家族3人で移り住み、自宅のログハウスに隣接する古民家を拠点に、里山での暮らしの楽しさを伝える活動や人材育成事業に取り組む。
 「田舎暮らしは生きるための基本を教えてくれる。周囲の人たちは、頑張っている人を応援してくれる」
 イベントは日本政策金融公庫が初めて開き、東北6県の移住者がパネル討論で地域の魅力や起業のこつを披露した。東日本大震災の被災地・宮城県女川町での創業支援や、横手市のフルーツと日本酒の定期通販業など、パネリストたちは東北で暮らす楽しさや働きがいを語った。
 こうした東北移住の魅力をより多くの人たちにどう伝えるか。とりわけ首都圏での浸透が課題だ。
 全都道府県の移住相談窓口が集まる「ふるさと回帰支援センター」がまとめた2016年の移住希望地ランキングは、東北に厳しい結果となった。東京・有楽町にあるセンター来訪者らの意向を調査した結果、移住希望先は1位が山梨で長野、静岡と続く。4位広島、5位福岡など西日本の県の上昇が目立つ一方、東北は福島が19位、秋田が20位に入っただけ。
 調査が始まった09年には、1位の福島をはじめ青森を除く5県が20位以内だった。
 東北の低迷には風評被害といった東日本大震災の影響があるが、それだけでない。同センターの嵩(かさみ)和雄副事務局長は「震災をきっかけに自分の暮らしぶりを見直し、移住を検討する若い人たちが増えている。子育て世代が多く、こうした世代のニーズに対応する必要がある」と指摘する。
 センターの利用者は09年に50代以上が6割を占めたが、16年には20代〜40代が7割近くに上った。
 若者に移住を促す一つの試みに「継業」という考えがある。後継者不足で休廃業を考える個人事業主の資産を活用し、起業を支援する。
 秋田県事業引継ぎ支援センター(秋田市)は後継者不足に悩む企業と起業家をマッチングする「後継者人材バンク」の対象に移住希望者を加え、地元住民に人気の喫茶店の事業を移住者に引き継ぐなどの成果を上げている。
 若い世代を東北に呼び込むには、子育て環境充実や雇用の場確保など課題が多岐にわたる。地道な都市・農村間の交流事業の積み重ねに加え、新たな発想の戦略が必要だ。


2017年03月27日月曜日


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