社説

「核禁止条約」交渉/日本の不参加 納得できぬ

 多くの国民が理解も納得もできないのではないか。
 「核兵器禁止条約」制定に向けて110カ国以上が参加し、ニューヨークの国連本部で31日まで開かれている多国間交渉の場に、日本政府代表の姿がないことだ。会議初日に不参加を表明した。
 オーストリアやメキシコを含む条約推進国は、7月までに条約案を作成する考えだ。
 目指すのは、破滅的で非人道極まる結末をもたらす核兵器の「非合法化」である。この国際的な取り決めで「使用」はもちろん、「保有」も違法とされれば、核兵器は持てなくなる道理だ。廃絶につながる大きな一歩である。
 だが、国際社会に核廃絶を訴え続け、本来なら主導すべき「唯一の戦争被爆国」が、その歴史的な交渉に背を向ける「矛盾」の決断をした。
 「同じ苦しみをどの国の誰にも味わわせてはならない」と、禁止条約制定を求める被爆者の悲願を踏みにじり、核軍縮の進展を願う国際潮流にも逆らう安倍政権の決定だと言わざるを得ない。
 昨秋の条約制定交渉開始決議に日本は反対票を投じた。だが岸田文雄外相は交渉には参加する意向を示していた。核保有国と非核保有国との「橋渡し役」になるためだ。
 確かに米英仏中ロの核保有五大国は交渉に参加していない。しかし、そうであれば、むしろ交渉に参加し議論の中で発言力を確保し、いずれ核保有国が参加できる条約づくりに努めるべきではなかったか。これでは、橋渡し役をも放棄したと同然だ。
 日本政府が不参加を決めたのは、核保有国抜きの交渉に意味はなく、保有国と非保有国との分断を一層深めるからという。しかし、その核心は核開発を続ける北朝鮮に対応するためには、米国の「核の傘」に依存せねばならないからにほかならない。
 このことを日本政府は国連の場で、核軍縮には「現実的な視点」が欠かせないと強調した。であれば、こちらの現実にはどう立ち向かうのか。
 核の傘を提供する米国のトランプ大統領は「核保有国として優位性を保つ」と、核戦力拡大に意欲を示している。言葉通りなら、かつての核軍拡競争をも招きかねない。
 核保有国の交渉による段階的な核軍縮を言い張る日本は看過できまい。だが、核の傘に守られているというもう一つの現実の方を重視し、軍拡に乗り出しても、見て見ぬふりを決め込むのだろうか。
 核兵器の偶発的な爆発、破滅的な人道被害から身を守るすべは核全廃以外にない。この当然の理念を安倍政権はいま一度、かみしめるべきだ。
 条約ができれば、核は違法が国際規範となり、核保有国の行動をも縛るはずだ。核廃絶という山の頂を極めるルートは、段階的核軍縮だけではあるまい。禁止条約は、その一つになり得る。交渉参加を再考すべきではないか。


2017年03月30日木曜日


先頭に戻る