社説

今村復興相発言/強まる政権全体への不信

 安倍政権が繰り返してきた「被災者に寄り添う」という言葉がうつろに響く。
 今村雅弘復興相が4日の記者会見で、東京電力福島第1原発事故で自主避難し、3月末で住宅支援を打ち切られた避難者に関し「どうするかは本人の責任」と述べた。
 国の責任を問う質問に「裁判でも何でもやればいい」とも発言。「うるさい」「出て行きなさい」と激高した揚げ句、会見を打ち切った。
 6日の衆院東日本大震災復興特別委員会では発言について陳謝した上で「自己責任という言葉の使い方がよくなかった」と釈明。7日には「本人の責任」発言をようやく撤回し、「私の意図するところと誤った伝わり方をし、反省している」と述べた。
 あまりにお粗末な経緯だ。震災復興の「司令塔」なのに、原発事故の避難者に寄り添っていないばかりか、被災者を冷たく見放すような姿勢を平然と示したことに驚く。復興相としての資質に疑問符が付くのは言うまでもない。
 福島県は、原発事故で同県から全国各地に自主避難している世帯を対象に行っていた住宅無償提供の支援を3月末で打ち切った。対象世帯は約1万2500に上る。仕事がある父親を福島に残した母子家庭も多いという。今村氏の発言は、そうした避難者の心情を深く傷つけた。
 自民党1強による緊張感の欠如も無縁ではない。昨年9月に台風10号豪雨で被災した岩手県岩泉町を視察した務台俊介復興政務官が、職員におんぶさせて水たまりを渡り批判を浴びた。
 今年3月に務台氏が辞任した際、今村氏は「辞めたからいいという話ではない」とこき下ろしたが、今度は自身が批判の矢面に立たされた。一連の発言は、おごりが醸し出す緩みではないか。
 復興相ポストはこれまでも失言などの失態があった。民主党政権で前身の復興対策担当相を務めた松本龍氏は被災した岩手、宮城両県を訪問した際に「知恵を出さないやつは助けない」などと発言した責任を取り辞任した。今村氏の前任で15年10月に就いた高木毅氏は慶弔費支出問題などで追及され続けた。
 12年2月に復興庁が発足して5年余り。大臣は内閣改造のたびに交代。安倍内閣では復興相が重要視されていない印象がある。被災地では「腰を落ち着けて復興に取り組む大臣が望ましい」(宮城沿岸の首長)との声が根強い。
 今村氏を巡っては、自主避難者らが中心となり、抗議集会を開くなど辞任を求める声が広がっている。野党も「論外の発言。復興相の資質はない」(蓮舫民進党代表)と圧力を強める構えだ。
 今村氏の釈明を受け入れる国民がどれだけいるだろうか。被災地では原発事故と震災復興の政府対応に、さらに不信感が広がった。安倍政権はそう受け止めるべきだ。


2017年04月11日火曜日


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