社説

避難指示解除/これからが踏ん張りどころ

 事態が大きく進展したことは間違いないが、まだまだ厳しい道が待ち受けていると、住民の多くが考えているのではないだろうか。
 働き盛りの男性は「一つの区切り。これからが大変だ」と率直に語る。80代の女性は「帰れるのはうれしい。でも、帰ってからが大変だ」と、荒れた田畑を想像し、複雑な思いを打ち明ける。
 東京電力福島第1原発事故に伴う福島県内の避難指示が今春、帰還困難区域を除く富岡町、浪江町、飯舘村と川俣町山木屋地区でほぼ一斉に解除された。
 原発事故では最大で県内11市町村の計約8万1千人が避難対象となった。今回の解除対象は約3万2千人。既に解除されていた楢葉町などを含めると、当初人口との比較で約7割が帰還可能となった。
 避難指示解除は、地域の再生の大前提で、復興の第一歩になるのは確かだが、前途が明るいとは決して言えない。
 原発事故から7年目に入り、避難先で新たな生活を築いた世帯は少なくない。国は「直轄除染は目標の3月末までに終了した」と説明するものの、放射線への不安は完全には拭えていない。
 復興庁が昨年実施した富岡町の住民意向調査で、「町に戻らない」との回答は57.6%に達し、「戻りたい」は16.0%にとどまった。数字が示す通り、実際の帰還者は当初は少ない見込みだ。
 特に子育て世代は、帰還をためらう傾向が強いとみられる。小中学校を福島市と川俣町の仮設校舎に置いている飯舘村の本年度の児童・生徒は計113人。原発事故前の2010年度(531人)から大きく減った。16年度(196人)と比較しても4割以上減少している。
 今回の避難指示解除を機に、避難先での定住と子どもの転校を決めた例があった可能性があり、村が来春に計画する村内での授業再開への影響がないとは言い切れない。
 高齢の帰還者が中心になるとみられる地域の再生をどう進めるか。国、県、地元自治体は生活や医療、教育などの環境整備と充実を唱えるものの、投資すれば簡単に効果が出るほど現実は甘くない。
 さらに第1原発が立地する大熊、双葉両町の全域と、5市町村に残る帰還困難区域は避難指示が今後も続く。約2万4200人の避難生活はいや応なく継続される。
 国は区域内に特定復興拠点を設け、除染とインフラ整備を一体的に進める方針。5年後をめどにする復興拠点の避難指示解除に向け、準備と作業の着手を急ぐ必要がある。
 「元の古里は戻っていない。まだ有事が続いていることは間違いない」。内堀雅雄福島県知事は新年度最初の定例記者会見で強調した。
 福島復興へ、さらなる難局に立ち向かっていく。4町村の避難指示解除を機に、改めて危機意識を共有したい。


2017年04月16日日曜日


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