社説

陸自PKO撤収完了/「新任務」は必要だったのか

 南スーダン国連平和維持活動(PKO)に従事していた、第9師団(青森市)を中心とする陸上自衛隊の部隊の撤収が完了し、危険と隣り合わせの5年4カ月に及ぶ活動に終止符が打たれた。
 安全保障関連法に基づく「駆け付け警護」が昨年11月に初めて付与が決定され、注目が集まった11次隊派遣。結局は4カ月後に安倍晋三首相が部隊の撤収を表明し、付与されただけで終わった。
 派遣されたのはインフラ整備に当たる施設部隊で、駆け付け警護は本来任務ではないはずだ。撤収を前提にした上での付与と指摘されても仕方があるまい。安倍政権の実績づくりだったのではないか。
 駆け付け警護は、自衛隊の近くで活動する国連職員やNGO関係者が暴徒などに襲撃された時に、保護要請を受けて救出に赴く任務である。
 保護対象者を守るために武器の使用基準は緩和されたものの、相手への危害射撃は正当防衛、緊急避難の場合に限定されている。緊急時に先制攻撃ができる他国軍と比べ、大きなハンディがある。
 政府が想定していたのは在留邦人の保護だったというが、邦人以外の救援要請があった場合、どう対処したのか。
 断れば国際社会から批判を浴びただろうし、応じれば戦闘に巻き込まれる危険性が高まる。現地の部隊は極めて難しい判断を迫られたに違いない。事前に訓練、教育を重ねたとはいえ、どこまで隊員の安全確保を勘案して付与したのか、疑問が残る。
 昨年7月に首都ジュバで起きた政府軍と反政府勢力の大規模な武力衝突を巡って、情報公開の在り方も問われた。
 外部から開示を求められた当時の部隊の日報について、防衛省は当初破棄したと説明していたが、統合幕僚監部に電子データが存在していたことが判明。陸自にも別に保管されていたことが発覚した。
 日報には「ジュバで戦闘が生起」などと記載があり、政府にとって不都合な治安情勢の悪化を隠蔽(いんぺい)したのでは、との疑惑も浮かび上がった。
 稲田朋美防衛相の指示で特別防衛監察が現在進められているものの、いまだに真相不明のまま。防衛省は早急に全貌を明らかにすべきだ。
 紛争当事者間の停戦合意などの「PKO参加5原則」との整合性も追及され、政府は国家間の戦闘ではなく武力衝突と押し通した。5原則形骸化の懸念は依然拭えない。
 そもそも撤収の理由について、安倍首相は「施設整備に一定の区切りが付けられる」と説明したが、こうした治安の悪化が主因だったろう。
 自衛隊が部隊を派遣するPKOは、これでゼロになった。積極的平和主義を掲げる安倍政権は新たな派遣先の選定を急ぐという。
 国連の要請があってから検討するべきで、本末転倒と言わざるを得ない。今回の派遣の検証の方が先だ。


2017年05月30日火曜日


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