社説

裁判員選任 低い出席率/国民が参加しやすく改善を

 裁判員制度への関心が薄れつつあるようだ。裁判員候補者の「選任手続き」への出席率が、開始以来、低下の一途をたどっている。
 市民感覚を司法の場に反映させる改革の柱としてスタートして8年。参加しやすい制度になるよう国民の側に立った見直し策を検討すべき時期ではないか。
 裁判員の選任は、事件ごとに候補者を定めた後、地裁が「選任手続き」への出席を求め呼び出す。当日、裁判所に出向いた人の中から裁判員6人と補充裁判員数人を選ぶ。
 重病や家族の介護など事前に辞退が認められた人を除き、候補者の出席率は2009年の83.9%を最高に、年々下がり続け、16年は64.8%。このまま低落傾向に歯止めがかからなければ、制度自体の先細りも懸念される。
 幅広い国民の参加を前提にしている裁判員制度は、原則として辞退できない。種々の理由での辞退を認めるかどうかは裁判所の裁量が大きい。
 場合によっては厳格に対応する必要もあろうが、裁判所の力で見直せることがあれば早急に改善するべきだ。
 アンケートなどで出席率低下の要因を調べた最高裁の報告書では、第一に審理の長期化を挙げている。
 初公判から判決までの期間は、09年が平均3.7日だったのに対し昨年は9.5日。じっくり審理したかったという一部裁判員経験者の声を受け、裁判所が日程に余裕を持たせた側面もあるという。
 ただ、長期化は日常生活への影響が大きい。事件に応じた適切な日程調整で、負担軽減の工夫を続けてほしい。
 積極的に参加を申し出にくい派遣やアルバイトといった非正規労働者の増加も出席率低下の要因に挙がった。
 裁判員法は、社員の参加に当たり企業が不利益な扱いをしないよう求めている。誰もが公平に参加できる制度の確立に向け、裁判所は雇用者側に協力を強く要請すべきだ。
 報告書は制度への関心が薄れていることも指摘した。「以前より裁判や司法への関心が増した」との回答は27.8%で、6年前(10年度)の50.4%を大きく下回った。
 参加の際に心配な点を聞いた別のアンケートでは「被告などの逆恨みで安全が脅かされる」(54.9%、複数回答)の伸びが目立っている。
 昨年、元組員らが福岡地裁小倉支部の裁判員に声を掛けて脅し、逮捕された。こんな事件が続けば制度は成り立たなくなる。裁判所は再発防止を徹底させ、裁判員の安全を保証しなければならない。
 過去の調査では、「やりたくなかった」という人も含め裁判員の約96%が「よい経験になった」と答えている。
 制度の意義は認めながらも関心が高まらないのは、負担を引き受ける国民へのサポートが不足しているからだ。
 改善に向けた議論を一つ一つ積み重ねてほしい。


2017年06月13日火曜日


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