社説

「核のごみ」マップ/処分地選定 信頼回復が先

 原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地選定に向け、経済産業省は地域の適否を地図上に色別区分した「科学的特性マップ」を公表した。
 処分地として「好ましい」「好ましくない」に大別し、さらに四つに区分。海岸から約20キロ範囲は「輸送面でも好ましい」と最適評価にした。
 地層の安定度や地下資源の有無などによる大まかな判別とはいえ、これだけ明快に色分けされると国の選定作業の第一段階という印象が強い。
 今後20年かけて建設地を決める計画だが、自治体首長らには慎重論も根強く、理解を得るには難航が予想される。
 政府は2015年、候補地を自治体の申し出に頼る方式から、地図を示した上で複数の自治体に調査の受け入れを求めるなどの方法に改めた。
 マップを見て国民に関心を持ってもらうことが前提で、経産省は「現段階で自治体に受け入れ判断を求めるものではない」としている。地域への押し付けの道具にしないよう十分留意すべきだ。
 東北は、太平洋側を中心に「好ましい」とされた地域が広範囲に分布している。奥羽山脈沿いの火山周辺や日本海側の油田付近は「好ましくない」の区分になった。
 ただ、現在の土地利用状況は反映されておらず詳細に調べれば不適地が増えるだろう。国から「最終処分地にしない」との確約を得ている青森県や、世耕弘成経産相が除外する意向を示している福島県にも適地の色づけがされた。
 東北の首長らの反応はさまざまだが、「復興を目指す地域や人々の力強さと最終処分場は相いれない」という野田武則釜石市長の発言が大方の住民意識を代弁している。
 高レベル放射性廃棄物は極めて高い放射線を出すためガラス固化体にして、地下約300メートルより深い岩盤に隔離する「地層処分」を行う。その期間は最長約10万年に及ぶ。
 遠い未来にわたる難題とはいえ、先送りはできない。今の世代に突き付けられているのは、自分たちが出した核のごみへの責任である。
 しかし、処分地問題と現下の原子力政策とを切り分けて考えるのは困難だ。福島第1原発事故で「安全神話」が崩壊したのに、国は原発の再稼働路線を推し進めている。
 このままでは際限なく使用済み核燃料がため込まれ、将来世代に引き渡す危険な核のごみが増えていくだけだ。一度立ち止まって原発政策を見直し、国民の不信感を解消するのが先決ではないか。
 処分地選定論議を前進させるためには国と自治体、地域住民との信頼は欠かせない。秋以降、経産省は最適地を重点に説明会を開くという。マップを活用し、共通理解の糸口をつかめるのかどうか。
 最終処分技術の信頼性や、将来にわたるエネルギー政策について、幅広い見地から腰を据えた議論が求められる。


2017年08月03日木曜日


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