社説

衆院選に問う 憲法改正/自己都合であってはならぬ

 憲法改正を宿願とする安倍晋三首相にとって、衆院解散は「賭け」である。改憲勢力が衆参両院で占めてきた、改憲発議に必要な「3分の2」の議席を失うリスクがないわけではないからだ。
 それでも、安倍首相は選挙後をにらみながら、新たな改憲勢力を構築する戦略を練り直しているはずだ。「9条改正」を公約に盛り込んだ日本維新の会に加えて、「9条を含めた憲法改正論議」を公約に掲げた希望の党などを念頭に、幅広い協力を要請する意向を示している。
 実際、希望代表の小池百合子都知事は「党の存在が、憲法改正に向けた大きなうねりをつくる役目を果たしていく」と、改憲に積極的に取り組む姿勢をアピールしている。
 選挙後、結果によっては改憲の論議が一気に進んで、現実味を帯びる可能性は否定できない。
 有権者は憲法に対する各党、各候補者の公約、主張に改めて目を凝らしたい。
 自民党は公約に自衛隊の明記、教育無償化、緊急事態対応、参院の合区解消−の4項目を掲げた。改憲が実現可能なテーマとして浮上してきたことの証しに他ならない。
 そもそも安倍首相が党総裁として今年5月、憲法9条1項(戦争放棄)2項(戦力の不保持)を残しつつ、自衛隊の根拠規定を追加する独自の改憲案を、突然提起したのが事の始まりだった。
 ただ、国防軍の創設を盛り込んだ従来の党改憲草案と相反したため、異論が相次いだ。そこで公約では玉虫色の「自衛隊の明記」にとどめた。党内論議が生煮えのまま、見切り発車の形で掲げたのは、安倍首相の強い意向が働いたためと容易に想像できる。
 当初2020年の改正憲法施行を思い描いていた安倍首相の「自己都合」の色合いが今回の解散劇と同様、にじみ出ているのではないか。
 政府は一貫して自衛隊合憲の立場だ。存在の明記は違憲論の「鎖」から解き放ちたいという理屈だが、憲法自体に手を付けたい意欲がありあり。しかし、国民投票で否決されたら、それこそ自衛隊の合憲性が揺らぐのではないか。
 自衛隊を明記する9条改正については与党の公明党でさえ慎重な姿勢を示し、共産、立憲民主、社民の3党は反対で足並みをそろえている。
 他の改憲項目も必要なのかどうか疑わしい。大規模災害などの緊急事態の場合に国会議員の任期延長が必要というならば、北朝鮮情勢が緊迫する中、衆院議員不在の政治空白を生む解散は「自家撞着(どうちゃく)」と言わざるを得ない。
 維新も掲げる教育無償化は憲法に規定するテーマとは思えないし、参院の合区解消は衆参両院の在り方の議論を先行すべきで本末転倒だ。
 問われるべきは改憲の必然性である。国民的議論が不可欠だ。「初めに改憲ありき」であってはならない。


2017年10月13日金曜日


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