社説

東日本大震災7年・福島/帰還進まず膨らむ危機感

 被災地の内と外の乖離(かいり)が進んでいるように思えてならない。東京電力福島第1原発事故との長い闘いが続く福島県内の被災地は、ことさら強く感じているのではないか。
 一つ事例がある。復興庁が2月に公表した双葉、浪江両町の住民意向調査の結果に対する受け止め方だ。
 帰還するかどうかについて「まだ判断がつかない」との回答が双葉町で26.1%、浪江町で31.6%となり、ともに1年前の前回調査から3ポイント余り増えた。一方「戻らない」は約1〜3ポイント減った。
 この変動について吉野正芳復興相は記者会見で「帰れるという期待感が如実に表れた」と極めて前向きに捉えた。
 両町では昨年、帰還困難区域の一部で除染とインフラ整備を進める特定復興再生拠点区域(復興拠点)の整備計画が認定された。復興へ、確かに一歩前に進んだ。
 しかし、地元は少なからず違和感を覚えたのではなかろうか。被災自治体の幹部の一人は「そんなに単純に言っていいのかな、という印象を抱いた」と率直に言う。
 何しろ、目の前の現実は厳しい。大熊、双葉両町は全域避難が今も続く。既に避難指示が解除された区域では、住民が戻ってきていない。帰還困難区域以外が昨年春に解除された浪江町の帰還率は対象人口の3.3%、富岡町は4.6%にとどまる。
 「地域経済が動いていない。行政の努力だけではどうしようもない」と浪江町幹部。富岡町関係者も「帰還者の多い少ないを評価できない。町が立ちゆくかどうか問われれば現実は厳しいが、諦めずにやっていく」と語る。
 暮らしやにぎわいを取り戻す手応えをつかめず、途方に暮れそうになりながら、復興を目指す姿が浮かび上がる。
 東日本大震災と原発事故から7年。復興・創生期間(16〜20年度)の半ばに差し掛かる中、政府が「復興の進展」を強調すればするほど、被災地支援の出口を探り始めているように映る。「最後の一人まで支援する」(吉野復興相)といくら繰り返しても、被災地の不安は拭えない。むしろ、膨らみ続けている。
 商業施設や産業団地の整備で暮らしや就労環境の再生などを目指す原発事故の被災自治体にとって、復興・創生期間終了後の財源不足が大きな懸念材料となってきている。
 内堀雅雄知事は「福島の復興は10年間では完遂しない。(復興・創生期間終了後の)道筋を付けてもらえるかどうか、県内では漠然とした不安がある」と指摘する。
 医療環境や廃炉作業中の原発のさらなる事故など、さまざまな不安が帰還をためらわせている。復興や廃炉の進展といった言葉で、避難者の声がかき消されてはならない。
 支援の出口ではなく、地域の将来を探るため、原発被災地の危機感と不安を共有することが改めて求められる。


2018年03月10日土曜日


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