社説

北朝鮮情勢/非核化へ 全てはこれからだ

 軍事衝突の危機も取り沙汰された朝鮮半島の緊張緩和に結び付く大きな環境変化ではある。むろん、北朝鮮の非核化につながることを期待せずにはいられない。この一週間で、めまぐるしい展開を見せた北朝鮮情勢のことだ。
 金正恩朝鮮労働党委員長の呼び掛けに応え訪朝した韓国特使団が4月末の南北首脳会談開催で合意。さらには金氏の意向を韓国が仲介し、5月までの米朝首脳会談開催にトランプ大統領が応じたのだ。
 特に、実現すれば史上初という米朝会談を快諾したトランプ氏は、金氏が核・ミサイル開発の凍結だけでなく「非核化の意思」を表明したことを評価したという。
 だが今のところ、言葉だけで、非核化に向け行動が伴う成果を何ら得てはいない。そうした成果を得るため、敵対する両首脳が話し合う、かつてない舞台づくりが始まる。まだ、そうした段階にすぎない。全てはこれからである。
 核問題の解決に両首脳の対話は不可欠で、協議が進展し朝鮮半島情勢の安定化につながれば、歴史的転換点となろう。だが危惧せざるを得ないのは、一連の動きが金氏ペースで進んでいることだ。
 その背景については、核開発のための時間稼ぎであり、米国の軍事的圧力と国際社会による経済制裁を緩和させたい思惑があるとされる。
 忘れてならないのは、北朝鮮は昨年、国力を総動員して築いてきた「核戦力の完成」を宣言していることだ。そうやすやすと手放すまい。相当の代価を求めてくるはずだ。
 非核化の条件として、金氏が挙げたのは軍事的脅威の解消と体制の保証だ。米国との平和条約締結や制裁の解除に加え、在韓米軍の撤収まで要求してくる可能性がある。
 だが、それは米韓とも受け入れられまい。この国相手に対話も交渉も、一筋縄ではいかないことを覚悟したい。
 米国では北朝鮮との強力なパイプ役が不在とされ、事前の協議を始めるため体制づくりを急ぐ必要がある。「非核化」を口にするなら、少なくとも北朝鮮に核関連施設の査察を含め具体的な核廃棄の道筋を提示させるべきだ。
 北朝鮮の対話攻勢が奏功する中、国際社会に楽観論が広がる。だが過去の合意がほごにされた歴史を踏まえれば、そのことで包囲網に緩みが出ることがあってはならない。
 訪朝した韓国特使がきのう、安倍晋三首相と会い、非核化を巡る金氏の発言内容を伝えた。政府はその内容を分析して真意を見定めたい。
 首相は4月初旬にも訪米しトランプ氏との会談を予定する。拉致問題解決へ協力を求め、米国の脅威のみならず地域の脅威がなくなる北朝鮮の完全非核化が最終目標であることを改めて確認すべきだ。
 南北首脳会議も見据え日米韓は連携を密にして、北朝鮮の恒久非核化に向け、対話・交渉戦略を練り直したい。


2018年03月14日水曜日


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